申請者は、1990年から1995年に設立された米国の創薬バイオベンチャー123社を対象に調査を進めており、約20年後の経営結果(倒産、経営継続、M&A)と一年間あたりの特許出願数との関連があり、バイオベンチャーの経営にとって発明の創出力が重要であることを既に報告している。 本研究において、アライアンスの違いについて検討を行い、事業結果との関連について考察を行うものである。既に特許出願情報から、共同出願の割合に差はないもの、共同出願の相手先及び発明の種類について違いがあることを明らかにしている。 また、ライセンス(導入、導出)、共同研究・開発、共同販売、買収のアライアンス情報の解析を行ったところ、倒産グループは他のグループに比較して他のバイオベンチャー及び製薬企業と共同研究件数が少なかった。以上のことから米国のバイオベンチャーの経営結果において、ビジネスサイドとのアライアンスが影響していることが示唆された。 さらに2022年度からは日本のベンチャーについても研究を開始した。本研究では日本のベンチャー支援の政策として2014年に施行された官民イノベーションプログラムに着目し、これにより設立された大学のベンチャーキャピタル4社について会社概要、ファンドの規模などを調査した。対象ベンチャーについては大学のベンチャーキャピタル4社の投資を受けた医学系ベンチャーとし、創薬以外にも医療機器、再生医療などを行っているベンチャーを含めて検討することとした。現在、医学系ベンチャーの製品・サービスに関連する特許出願の抽出を終え、特許出願の有無と投資との関連が明らかになりつつある。今後は、件数のみならず、特許出願の質的な観点から投資との関連について検討する予定である。
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