研究課題/領域番号 |
18K01796
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
陳 俊甫 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (30513733)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サービス化 / サービタイゼーション / サービス志向 / 戦略選択 / 製品志向 / 顧客志向 / サービスイノベーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,製造業におけるサービス化の取り組み,即ちサービタイゼーション(servitization)現象に焦点を当て,多分野にわたる従来研究を通底する論理の考究とサービタイゼーション戦略のメカニズムの解明を通じて,既存理論の補完と拡張を試みることである。2018年度は全研究期間の初年度にあたり,研究計画では次の目標を設定した。即ち,多分野にわたる従来研究を体系的に精査し,サービス化現象をあらわす多様な専門用語の視点,カバーしうる範囲,および前提条件を考察し,それらの用語間の相違と到達点を整理することである。 これに対して2018年度の実績は次のとおりである。Web of science, Emerald, Elsevierなど複数の電子ジャーナル・データベースに掲載された国際ジャーナルを中心に関連論文の検索とレビューを行った。その結果,(1)既存研究における「サービタイゼーション」という用語の多義性,即ち製造業のサービス化現象に関して様々な用語が使われ,たとえ同じ用語であっても強調点が異なればそれに含まれた意味も異なることが確認できた。(2)製造業におけるサービタイゼーションへの期待をめぐって,既存研究ではある程度のコンセンサスを確認することができた反面,このコンセンサスは実証研究に裏付けられた実践的な意味合いの検討が十分に展開されてこなかったことも判明した。(3)既存研究においていくつかのサービタイゼーション戦略の類型化を確認することができたが,それらの戦略は特定の企業事例に基づくものが多く,その戦略のメカニズムの解明と理論構築は十分に行われていない実態が浮き彫りになった。こうした文献レビューで得られた知見は研究成果に示した雑誌論文にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画にあるとおり,初年度はサービタイゼーション戦略に関する文献レビューを体系的に行い,既存研究の実態と到達点を確認することができた。その結果,次年度以降の研究方向性がより鮮明になり,本研究を大きく前進させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は本研究期間の2年目にあたり,年度研究目標は,製造業におけるサービス化の実態を調査し,サービタイゼーションの構造分析を行うことである。経済社会のサービス化の勢いが増すなか,製造業のサービス化の必要性は広く認識されているものの,ある企業が成功し他の企業がその取り組みにつまずき撤退する羽目に陥ってしまう。初年度の研究知見を踏まえて,製造業のサービス志向,サービス化のための条件,備えるべき能力とサービタイゼーション戦略の関係などについて,日本の製造業を中心に調査し,その実態を明らかにする。また年度の研究結果については,準備が整い次第,国内・外の雑誌や学会において順次発表することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は一定規模のアンケート調査やフィールド調査を計画しており,調査費用と調査用旅費を確保するために,初年度の経費から4万円程度繰り越しすることにしました。
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