研究課題/領域番号 |
18K01805
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
細萱 伸子 上智大学, 経済学部, 准教授 (50267382)
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研究分担者 |
新井 範子 上智大学, 経済学部, 教授 (50286134)
竹内 明香 上智大学, 経済学部, 准教授 (40506135)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SIEs / キャリアキャピタル / コンピテンシー / 意思決定 / 女性 / グローバル / 転職 / 帰任 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度同様、海外におけるフィールド調査の実行を見送り、これまでの調査結果の整理に注力した。前年度までの研究結果を踏まえ、海外現地での就業経験、帰国の意思決定から日本での労働市場への再エントリー、帰国後就職先での再適応問題と段階を分けて検討する必要が明らかになった。 本年度は特に現地でのキャリア・キャピタル蓄積と活用の部分について、社会的関係性、具体的には個人が現地適応において活用したネットワークとの関係で再検討した。 特にSIE研究で指摘されるように、SIEの出国動機には、海外移住の経験を求めるものが一定程度含まれる。動機が海外でのライフスタイルであっても、ビザの獲得には本人のスキル水準が問題となり、キャリア・キャピタルの蓄積状況はSIEsにとって、SIEsとして存在する前提となる。こうしたSIEsという海外就業者の特殊な前提条件にかんがみ、近年高スキル移民の研究で注目されているキャピタルの切り下げと呼ばれる、入国時に出身国で得られていた就業条件よりも低い就業条件で雇用される現象について、台湾での事例をもとに確認し、そこからの条件向上やキャリア展望の描き方について分析をした。 結果として、現地企業就業日本人女性の海外マーケットでのキャピタルの切り下げには、妥協とキャピタルの追加という行動がとられること、追加の行動はローカル企業とのコンタクトと関係することを示した。またキャピタル追加の行動は、キャリア再構築の一環ととらえられるが、その際に、新しい業種や職務での就業ではなく、以前から保持しているキャピタルに立脚すれば、より条件のよいキャピタルの獲得や活用ができることを明らかにした。 一方で、ビザの取得が必要でない母国への帰国と再就職には、過去に蓄積したキャピタルの活用に関する本人の意思が重要であり、ひいては個人アイデンティティとの関係で検討するべき問題であると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ下で思うような調査実行ができなかったため、方針を変更して、海外就業時から帰国にかかわるキャリア・キャピタルの問題に集中したため
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて、質的調査部門の方法論確立を目指し、キャリア経路の特性と帰国後に経験する困難の認知が、発達課題としての将来展望へと転換していく経路を明確に表現する方法を開発する。量的調査部門については、女性のキャリア自律の意識とキャリア適応の能力がキャリアへの満足感や納得感へ結びつく際に影響する要因を考慮したモデルの最終設計と実査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外実地調査の実行ができなかったため。 最終年度に向けて、質的調査部門の方法論確立を目指し、キャリア経路の特性と帰国後に経験する経路を明確に表現する方法を開発する。量的調査部門については、女性のキャリア自律でのセルフプロジェクト実行に関するモデルの最終設計と実査を行う
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