研究課題/領域番号 |
18K01809
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
土肥 将敦 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (50433157)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ソーシャル・イノベーション / CSR / 正統性 / ウェルビーイング / 持続可能なサプライチェーン |
研究実績の概要 |
本研究は、多様な社会的課題に対して、企業が事業として関わっていく中で、それらが人間の“善きあり様(Well-being)”に対してどのように貢献できるのかについて考察するものである。昨年度は、ソーシャル・イノベーションの中でもコーポレート・ソーシャル・イノベーション(CSI)の正統性要因を明らかにしてきたが、今年度は企業活動におけるサプライチェーン上の諸課題の中でもとくに外国人労働者に焦点を当て、企業のCSR活動の中でも、持続可能なサプライチェーンの推進にかかわる取り組みについて整理を行った。先行研究の網羅的なサーベイを実施し、それらを「取締り型アプローチ」、「能力開発型アプローチ」、そして「労働者主体型アプローチ」の3タイプに類型化した。これらの中でも取締り型アプローチは伝統的な社会監査の手法であり、労働者主体型アプローチは比較的新しい革新的な手法である。先行研究のサーベイと、日本のアパレル業界の事例から得られた知見は次のようなものである。第1に、企業が採用しうる3つのアプローチに関して、企業側はサプライチェーンの構造やローカルなコンテクストの状況に応じて継続的な見直し改善が求められるとともに、これらの3つのアプローチの長短を把握した上での戦略的活用が求められること。第2に、日本のアパレル業界においては、外国人技能実習生の受け入れに関して彼らの失踪問題等の諸課題が生じているが、これらに対して政府による制度的な見直しの必要性とともに、企業側には労働者主体型アプローチなどの新たな手法の導入が求められること、である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主たる目的は「ビジネスを通したソーシャル・イノベーションが実現されるための論理としての正統性要因を明らかにすること」と「社会福祉領域におけるビジネスを通したソーシャル・イノベーションが、どこまで人間の善き有り様に貢献することができるのか」というものであった。前者に対しては、研究対象事例数が当初の予定より少ないもののDoi(2020)において概ね明らかにすることができた。後者については、今年度の論文の中で焦点を当てたが、持続可能なサプライチェーンの推進における革新的なモデル(労働者主体モデル)について事例検討が行う事ができなかった。COVID-19の影響により、当初予定していた状況とは大きく変更が生じたため、3年間の研究の取り纏めを行うべく1年間の研究延長を申請することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の総括を行うためにも、ソーシャル・イノベーション、コーポレート・ソーシャル・イノベーション、ウェルビーイングに関わる理論的な整理を行っていく。その中で、本研究の鍵概念となっている正統性(legitimacy)やエクスクルーシヴネス(exclusiveness)についても、全体の中で体系的に位置づけていく。また、これまで実施してきた研究対象に対するフォローアップインタビューも実施し、最新のデータを入手するようにつとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により予定していた海外での学会報告が延期になったことが主たる理由である。また資料整理などのために予定していた補助作業員アルバイトも同様の理由で雇用を延期しているため。今年度はオンラインでの学会報告などに切り替えて実施して行く予定である。
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