第1は、100号条約の意外な成立経緯の解明である。1951年ILO委員会の最終審議で、米国政府は自身の修正案を押し通すことを躊躇した。しかし、米国政府委員が知らないところで、労働者委員と他の政府委員の多数が修正案賛成に合意していたので、ほぼ修正案どおりに採択された。米国政府が他を説得して採択させたのではなかった。 第2は、同一価値労働同一賃金原則の現在の実践は欧州諸国中心だが、その歴史的意義の解明である。原則の考え方の起源は米国だが、それをILO条約とした多数派とは欧州諸国の労働者と政府であった。したがって、2023年EU賃金透明指令も含めて、欧州諸国が実践に努力するのは当然となる。
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