今年度の研究概要は以下の3点である。 第1に、新聞記事に掲載された内容から非営利組織不正に関するデータセット作成し、不正の種類、行為者、規模、期間、開始時期、組織の解散について、定量的データに基づいて探索的に分析した。その結果、不正を開始する時期が若い組織ほど、それが発覚すると解散率が高くなるなど、いくつかの非営利組織不正に関する傾向を導出することができた。この研究成果は、学会報告と学会誌論文において発表した。また、非営利組織不正の分析に関する過程やその意義について、非営利組織の機関誌においても報告した。 第2に、非営利組織に関する文献レビューや資料収集を一層充実させるとともに、非営利組織の代表者に対して、いくつかのヒアリング調査を実施することができた。このヒアリング調査では、組織不正の防止だけでなく、事業承継、後継者育成、企業・行政との協働のあり方など、さまざまな観点から非営利組織の組織特性を考察する意義を見出すことができた。特に、非営利組織における事業承継や後継者育成については、学術誌論文において発表し、協働のあり方については、学会のワークショップにおいて発表した。 第3に、非営利組織に限らず組織全般の不正に関する文献研究を進めた。一概に組織不正といっても、組織目的のために個人が行う不正や、個人利益のために組織に損害をもたらす不正など、組織不正における多様性を認識することが重要であることが確認できた。特に、非営利組織不正に適用した場合、行政との関係、企業との関係など、非営利組織を取り巻く連携・協働という現象にも焦点を当てる重要性を認識することができた。組織不正における多様性については、業界誌において発表し、非営利組織の連携・協働と組織不正の関連性については、今後、学会報告に向けて準備をしているところである。
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