研究課題/領域番号 |
18K01818
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
安藤 史江 南山大学, 経営学部, 教授 (70319292)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 組織変革 / ダブル・ループ学習 / ダイバーシティ / 制度の効果 / 意味づけ・解釈 |
研究実績の概要 |
2018年度は、組織変革および組織学習についての先行研究の把握・整理を進めるとともに、創造的な働き方を可能にしている企業や、それを目指して積極的な取り組みや試行錯誤をしている地元企業へのヒアリング調査や質問票調査を実施した。また、以前に実施した調査のテキストマイニングによる追加分析も行った。 その中で浮かびあがってきたのは、大きく3点ある。1つは、創造的な働き方を可能にしている企業では、管理やルールを最低限に抑える一方で、組織メンバー個人の好奇心や遊び心を大切にしたり、職場の同僚や会社の仲間に何ができるか、どうすれば助けになるかを追求することを非常に重要視する傾向があること。2つ目は、そうした状態に至る過程では、それ以前で当たり前とされていた価値観を転換するための葛藤や反発があるが、圧倒的なエネルギーと信念でそれを克服し、推進するリーダーの存在と、その途中経過としての、反対者をも黙らせる組織成果が得られていること。3つ目は、既存の価値観の転換という、ダブル・ループ学習の結果としての組織変革の実現の障害になりうる、組織内のメンバー同士、その価値観同士の衝突は、同じ言葉を用いながら、違う内容をイメージしていることに端を発しており、それになかなか気づくことができないことが、事態を深刻化させる恐れを招くと考えられること、である。それは革新的な制度を導入することで得られる効果をも、上回る可能性を示唆するものでもあった。 中でも、3つ目の点は、働き方改革や女性活躍推進に代表されるダイバーシティへの取り組みといった、近年その行く末が注目されている諸政策と密接に関係し、その成功失敗を分ける重要な要因となる可能性が高いと考えられたことから、今後、より掘り下げた分析・考察を引き続き、行っていく必要があると計画している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象とした企業は予定した数よりは多くないが、調査が可能になった企業とは一つ一つ丁寧に向き合えており、結果的にリッチな調査・分析・考察が可能になっていると思われるため。また、調査対象企業の都合などもあり、進捗が予定より早いわけでも決してないが、その期間を過去に蓄積した研究成果との関連性を吟味する時間に振り分けることができており、総合的にみると、順調に進んでいると捉えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、2018年度の調査から得られた知見を公表すべく、成果物としてまとめることを急ぎながら、その知見を基盤にして、広く浅く、より複数の企業組織に調査対象を広げることを試みる。もちろん、相手の都合があることから、無理ない範囲で地道にコンタクトをとり続けていきたい。 また、現在手元に入手済みのデータをより一層掘り下げることも、同時並行的に進め、より深く、また多面的に光をあてたい。必要であれば、さまざまな分析手法についても新たに学び、分析に取り入れていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、ヒアリング対象企業を東京を中心とした複数の企業に設定していたが、結果的に2018年度は地元である名古屋の企業を中心に各社複数回、重点的に行う形となった。そのため、予定していた交通費等が大幅に抑制される結果となってしまった。しかしながら、2019年度以降には、名古屋以外の地域の企業にも、2018年度の調査結果から明らかになってきたことをさらに一般化できるか検討するために、広く浅く、調査協力依頼を呼びかける予定であるため、今後は使用していく予定である。 また、主に使用しているソフトウェアも2019年度になって2年ぶりにバージョンアップされたため、2019年度はそれをインストールするPCも含め、購入予定である。
|