研究課題/領域番号 |
18K01818
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
安藤 史江 南山大学, 経営学部, 教授 (70319292)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リモートワーク / 両利き / 組織学習 / 遠投経営 |
研究実績の概要 |
COVID-19に伴い、これまで推進しようとしながらなかなか普及しなかったリモートワーク(テレワーク)が大企業を中心に普及した。もともと期待されていた効果(柔軟な働き方の実現などの、新たな働き方に向けた動き)も実感される一方で、コミュニケーション不全や孤独感、生産性への影響などの問題も指摘された。 本研究では、自由記述をテキスト分析することを通じて、回答者本人が明確に意識していない効果や問題点を浮かびあがらせることを目指したところ、職場を集中する場と捉えている人ほど、リモートワークの進展下で生産性が振るわないこと、反対に、職場をコミュニケーションをとる場と捉えている人ほど、生産性は高く、活用と探索、いわゆる「両利き」状態を実現できている傾向を確認した。 また、こうした環境変化の中でも成長を続けている企業の事例分析も行った。10年前や20年前と比較して業績が3倍近く成長している企業3社に対して、ヒアリング調査を行ったところ、経営者が高い希求水準を掲げていると同時に、それに合わせてビジネスモデルを大きく転換することで、従業員がその新たなビジネスモデルで成果を出そうと積極的に組織の外に学習源を求める、という両輪がうまくかみ合うことで、結果を出していると考えられることがわかった。これからの時代の新たな働き方、経営のあり方のヒントになると考えた、この経営手法を本研究では「遠投経営」と名付け、その遠投経営が可能になる組織条件についてもあわせて考察した。 さらに、これまで部分的にしか捉えてこなかった組織学習についての測定を、包括的な観点から測定できるよう、国内外の挑戦的な先行研究を参考に、尺度の開発の試みも行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画で予定していた出張は難しかったものの、国内外でオンラインの環境が広く整ったことから、質問票調査およびヒアリング調査にまったく支障を感じることなく、目的を達することができた。その結果については、複数の論文としてまとめることができた。また、国内のみならず、国外のデータも入手することができ、新たな働き方を考えるうえで、その国際比較のデータを用いることが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでの4年間で蓄積した事例研究や質問票調査データ(国内の3000サンプルを超えるデータおよび外国の約500のデータ)を用いて、時間をかけて慎重に分析・考察するとともに、その結果を論文もしくは著書という形で執筆して公表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に引き続き、コロナ禍の影響で対面でのヒアリング調査が行われず、また、その代わりの手段として、各社にZoomなどのオンラインを通じた調査環境が整ったことから、ヒアリング調査用に見込んでいた費用がかからなかったため。 一方で、質問票調査を実施してデータを蓄積できたことから、次年度はその分析結果や考察の結果を英語の論文としてまとめたい。そのために、積極的に英文校閲の費用にあてたり、国際比較のデータの内容を正しく解釈するための追加のヒアリングに際し、通訳を依頼するなどの費用にあてたい。また、論文投稿にかかる諸費用にあてたいと考えている。
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