本研究は,わが国において長い間,必要性が認識されながらも行われてこなかった非営利法人制度改革が,21 世紀の初頭に「なぜ」そして「どのように」実現したのかを,事例研究によって解明することを目的としている。 近年,わが国でもNPOをはじめとする非営利法人が,社会において重要な役割を果たすようになった。一般の人々の関心も大きく高まり認知も格段に拡がっている。こうしたなか,さまざまな非営利法人の制度改革が行われるようになった。しかし,一部の先駆的研究を除いて,非営利法人の制度改革はほとんど注目されてこなかった。 1998 年 3 月に NPO法(特定非営利活動促進法)が,2001 年 3 月に NPO優遇税制がそれぞれ成立した。2008 年4月には,1898 年の民法施行以来じつに110年ぶりに,公益法人制度が改革された。さらに 2011年6月,2001年の NPO優遇税制の制定以来 10 年ぶりに,NPO法と寄付税制が改正された。公益法人制度改革は,主務官庁制を廃して法人の設立と公益性の判断とを分離するとともに,税制上の優遇措置も講ずるという画期的な改革であった。 NPO法と寄付税制の改正も,法人の認定・認証を地方に移管するとともに, 税額控除も導入するという画期的な改革であった。これら2つは,いくつかの問題点を含んではいるものの,いずれも優れた制度改革であるといわれる。 われわれは,この画期的な公益法人制度改革ならびにNPO法と寄付税制の改正の2事例が実現された因果メカニズムを明らかにした。さらに,これら制度改革の評価すべき点と成果,および問題点をそれぞれ析出した。同時に,政策形成に関わる参加者がいかに行動すべきかの指針も提供した。
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