研究課題/領域番号 |
18K01821
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
加藤 敦 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (00329963)
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研究分担者 |
三宅 えり子 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (20288608)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アントレプレナーシップ / 人間志向の起業家精神 / 女性のリーダーシップ / Humane entrepreneurship / 国際交流 / 特定非営利法人の事業報告書 |
研究実績の概要 |
コロナ禍により、計画していた女性起業家への個別インタビューの進捗が計画を大きく下回る中、以下の通り、着実に成果が出るよう研究方法の見直しに努めてきた。 第1に理論面では、International Council for Small BusinessのKim-Kichan元会長が提唱する「人間志向の起業家精神」のスキームを踏まえながらも、社会的インパクトを中期的にとらえ、女性のリーダーシップ、環境適合、プラットフォームとしての行政等の役割に焦点を絞り、先行研究サーベイ並びに理論スキームの構築を進めた。この背景には、経済環境の変化、公的助成・企業助成の単年度主義などに伴う収益構造の不確実性がきわめて大きく、社会的な価値提供を安定的に続けるためには環境適合行動が重要であることを事例研究を通じ再確認したためである。第2にコロナ禍において社会調査手法の多様化に努めた。すなわち従来からの質的調査(半構造化インタビュー)に加え、特定非営利法人等のディスクロージャー資料にもとづく総合的分析(バランスト・スコアカード)並びに質問調査法を進めた。第3に研究成果の公表については、これまでの研究成果をとりまとめ、関係先に再インタビューを行うなど、書籍「アントレプレナーシップとジェンダー平等(仮題)」として出版準備を進めてきた。また、社会への還元として、2年ぶりに実施された同志社女子大学「女性のための起業家セミナー:地球環境と人に優しく脱成長時代のビジネスとは」において社会性の高い女性起業家3名の講演、事例分析をコーディネートした。さらに、2022年度より同志社女子大学講義科目「経営学ステップアップ」をアントレプレナーシップ教育として一新するための準備をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により女性起業家へのインタビュー(半構造化インタビュー)に支障が生じている。また、これまでの研究成果をとりまとめ、書籍「アントレプレナーシップとジェンダー平等(仮題)」として出版するため、12名の先進的な女性起業家への再インタビュー実施を優先した。これら起業家の人選は事業性のみでなく社会性も考慮して実施した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、わが国女性が「人間志向の起業家精神」を育むため環境整備に寄与することである。本研究ではアントレプレナーシップを、社会性の高いイノベーションを起こす実行能力としてとらえ、(1)積極性・革新性・リスクテイキングから構成される心的態度(Individual EO)、(2)リーダーシップ等のケイパビリテイ(人的資本)から構成されるものとしてとらえる。こうした考えにもとづき、今後の研究は以下の通り進める。 第1に理論的スキームを再整理する。すなわち「人間志向の起業家精神」をベースとして、リーダーシップ、環境適合、プラットフォームとしての行政等の役割、という要素を勘案して体系化する。第2にコロナ禍においてインタビューに過度に依存しない、多様な調査方法を進める。すなわち(1)従来からの半構造化インタビューに加え、(2)特定非営利法人等のディスクロージャー資料にもとづく分析、(3)民間調査会社のモニターを活用した質問調査法を組み合わせる。半構造化インタビューの事例数については、キャリア中断、地域、国等のコントロール変数の影響を考慮する。ただしコロナ禍の動向により、総数は変わる可能性がある。第3に研究成果の公表については書籍「アントレプレナーシップとジェンダー平等(仮題)」の出版に加え、学会発表、論文執筆に努める。さらに、社会並びに大学教育への還元に引き続き尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、第1にコロナ禍でインタビュー実施(出張)計画に大きな支障が生じたことがある。第2に女性起業家・社会的企業家に関する研究者間の交流の場である国際学会International Council for Small Business がオンライン開催となったためである。第3に書籍執筆のための先進的企業家への再インタビューを優先したためである。 今後使用計画は次の通りである。第1に国際的視点から先行研究や先進事例に関する文献調査を継続する。第2に社会性の高い女性起業家に対する半構造化インタビューを実施する。第3に調査会社のモニターを活用し、人間中心の起業家精神(Humane entrepreneurship) の形成過程と環境との関連について質問調査を行う。第4に特定分野を選び、女性リーダーが進める非営利活動のディスクロージャー資料をデータベース化し、バランストスコアカードの手法により分析する。第5に学会等を通じた研究成果公表を積極的に行う。
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