研究課題/領域番号 |
18K01822
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
西岡 健一 関西大学, 商学部, 教授 (40553897)
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研究分担者 |
南 知惠子 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (90254234)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | サービタイゼーション / 製造業のサービス化 / サービス・イノベーション |
研究実績の概要 |
2020年度は、本科研プロジェクトの中心テーマである「製造業のサービス化」について、研究の核心的課題である「情報通信技術の活用と製造業のサービス化程度の関係」について、調査・研究を行った。それとともに、コロナ禍をきっかけとして、改めて研究手法の見直しを行った。その結果、従来主流とされていた研究手法を大きく改良する必要があることが分かり、本研究分野ではあまり試みられていなかった研究手法に着目し、他分野からの研究蓄積を援用し、新たな研究手法を検討・開発してきたことが特筆される。 まず研究の理論面においては、既存文献を元に理論的な整理を行い、2020年前半に各種論文にまとめている。それと同時に進めているのは、サービス化の程度とICT利用能力について、定量的に測定する手法の開発である。2020年度の研究蓄積は、主にこの分野にある。まずは基本的なコーディング手法、及びコードブック開発を行い、先に開発した研究仮説に基づき、定量分析を行った。具体的には、2020年3月期の製造業企業の決算報告書を元に、現在の日本企業のサービス化の取組み具合について、データ化を実施し、分析を行った。2020年度はクロスセッションデータの構築を試みた。データ収集の方法について、様々な蓄積ができており、第一段階としての仮説・検証を行うことができた。 また同時に、製造業のサービス化類型がICT利用能力との関連について、理論的な整理を行うとともに、事例分析を継続的に進めている。コロナ禍で国内外の学会で発表する機会は減っているが、企業・団体で研究成果の知見について講演を求められることが多く、非常に実務からの期待が大きい研究分野であると実感している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年には、当初予定している大規模アンケート調査を実施できなかったため、その分、進捗が遅れている。これに関しては、コロナ禍を意識して、研究期間中であるが、改めて研究計画の見直しを行い、2次データを基にしたパネルデータの構築を優先することとした。この分野では、まったく新しい研究手法のため多くの困難があるものの、他分野の研究蓄積を元に、理論的にデータ収集を進めている。そして2020年度はクロスデータの収集を行える目途が付いた点は大きい。2021年度は引き続きデータ収集とパネルデータベースの構築に向け、取り組んでいきたい。調査全体を通して見ると、ほぼ予定通りの進捗であると判断している。但し、企業活動の自粛からインタビュー調査は充分進んで居らず、それらの点を踏まえると、おおむね計画通りとの判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2019~2020年度に開発した分析枠組みにおける、構成概念間同士の検証を行うためのパネルデータベース作成を引き続き行う。 また2020年度に予定していたのだが、コロナ禍で実行が困難になった企業インタビューを進めたいと考えている。当初予定した企業数は50~100社であったが、コロナ禍における新たに研究手法を検討した結果、一つの企業に対して深いインタビューを10~20社程度に行うことで、構造化インタビューを行う計画がある。これについては、インタビュー結果をコーディングして、定量的に調査分析を行うための基礎的な手法を2020年に開発している。 また当初計画にあった、製造業を対象とした大規模質問紙調査についてだが、コロナ禍により実施を延期していたが、2021年度後期に実施を計画している。過去10年間、各科学研究費プロジェクトの単位で、実施を行っており、時系列横断的なデータ収集を行うことが重要であるためであり、本科研プロジェクト終了後も、分析を行うこととしている。日本の株式上場製造企業を対象とした約500社、複数部門のマネジメント層約2000名を対象に質問紙調査を行う。過去2回の調査では企業単位で回収率は4割を超えており、今回も同様の設計で行う。 以上のプロジェクトを実行する意図は、理論構築のためには、過年度分の企業の行動データを分析した方が、より効果的に質問紙調査が可能となると判断したためである。つまりパネルデータでは充分データ化できない項目に関して明らかにするとともに、その領域に関して、アンケート調査により、中身の濃いディープデータを取得することが、より理論構築に有効であると判断したためである。
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次年度使用額が生じた理由 |
企業に対しての大規模アンケートの延期、企業へのインタビューの自粛、また海外学会への参加を見合わせたために生じた。2021年度は、パネルデータの構築を中心に研究を行い、コロナ禍にあっても、より高度化した研究手法を実行していく。
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