本年度は、理論構築とともに、研究手法を大きく発展させることに注力した。 研究の方法論:主観性の高いインタビュー及び質問紙調査から脱却し、公表された企業情報から内容分析によるデータ収集を行うことで、リサーチの客観性を重視した調査手法の確立に努めてきた。具体的には、調査対象の範囲として,東京証券取引所に上場している製造業のうち,機械,電気機器,精密機器,輸送用機器の4業種に属する企業632社に対して、内容分析の対象資料を,2019年決算期公開資料である有価証券報告書及び決算説明会資料を用いた。財務情報は,日経Needs Financial Questのデータベースに収録されている財務データ,取引情報はBloombergの提供しているデータベースを用いた。これにより、ICTの高度化利用程度と製造業におけるサービス化の程度を内容分析によってデータベース化した。 研究成果:こうした公開データの内容分析と外部機関の持つ客観データとの組み合わせによる実証分析は、ICT高度化利用程度とサービス化の促進要因の関連性を導き出すことができた。具体的には、情報通信技術の高度化利用程度,サプライヤーへの取引依存度の高さ,市場競争環境の安定が製造業のサービス事業化を推進することを示した。 今後の課題:促進要因としての市場条件や企業間関係についての関係性についての定式化が現時点では課題となっているため、サプライヤー・顧客との関係性、市場構造を含めた分析モデルと試行的な実証分析に着手している。
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