研究課題/領域番号 |
18K01824
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
奥野 明子 甲南大学, 経営学部, 教授 (20319784)
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研究分担者 |
大内 章子 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (20335110)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 産休・育休からの復職者 / 人事評価 / 二重の減額問題 / 仕事の配分問題 / 制約のある働き方 / ジェンダー・バイアス |
研究実績の概要 |
2020年度は、以下のワークショップおよびセミナーを開催した。第10回ワークショップ「育児休業取得後復帰者のための評価を考える」 、「産休育休からの復職者のための人事評価」(7月8日 )、ダイバーシティーマネジメント「産休 ・育休からの復職者のマネジメント-人事評価に注目して」(11月26日)、第11回ワークショップ「復職者のための人事評価ワークショップ」(12月3日)、「時間制約のある社員の人事評価」(12月17日)、 しまね働く女性きらめき応援塾2020番外編「産休後も活躍し続けるための働き方デザインワークショップ」(2月24日)、「産休 ・育休からの復職者を生かすための働き方支援を考える」 (3月11日)。これらのワークショップ・セミナーから最終的に117のアンケートデータを回収し、分析した。 その結果、復職者の仕事配分、人事評価結果、人事評価の納得度、それらが復職者の心理に与える影響について、次の6点を明らかにした。(1)「計画の立てやすい仕事」は、評価に対する納得度と昇進・昇格意欲に正の影響を与えているが、就業継続意欲には負の影響を与えている。(2)「緊急対応の仕事」は就業継続意欲に負の影響を与える。(3)質の高い仕事とみなされる「成長につながる仕事」、および「単独で進めやすい仕事」はいずれにも影響を与えていなかった。(4)人事評価の結果は、評価に対する納得度と昇進・昇格意欲に正の影響を与える。同時に、昇進・昇格意欲は人事評価に正の影響を与える逆の関係もみられた。(5)フルタイムで働いている女性の方が、短時間勤務をする復職者よりも昇進・昇格意欲が高い。(6)短時間勤務の期間が長い女性ほど、現在の評価に納得しており、また、就業継続意欲が高い。 この論文は、2021年度中に学会報告、学会誌への投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は最終年度であったが、コロナ感染拡大の影響を受け、1.日本各地でのワークショップの実施が困難となった、2.海外学会(British Academy of Management)にて発表を予定していたが、渡航ができなかった、3.ワークショップの開催が遅れたため、そこで実施する予定だったアンケートの実施・回収が予定通りにいかなかった。以上の点が、研究の進捗状況の遅れにつながっている。また、4.復職者、非復職者を対象とした比較的規模の大きいアンケート調査の実施を予定していたが、全体的な研究の遅れのために実施できなかった。 1はオンラインのワークショップへ急遽切り替えて実施した。3は、オンラインで実施したワークショップにおいてアンケートを実施し、2020年12月に 目標数の100を超えたことから、アンケートの統計的分析を3月に実施した。この結果は、2021年7月に開催される国内学会報告(第51回日本労務学会全国大会)にて報告予定である。延長申請が認められたため、4については2021年度の実施を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年までは、ワークショップにおいてアンケートを実施し、それらを分析した。ワークショップへの参加者は、復職者に限られるため、データは復職者のみのものである。したがって、復職者と、非復職者(通常勤務者)との比較 ができなかった。最終年度となる2021年は、復職者、非復職者の比較研究を行う。調査会社に依頼し、復職者(男女各200)と非復職者(同)のデータを集め、それらを比較することで、復職者の人事評価の特徴及び問題点がより明らかになることが考えられる。 2021年7月には、日本労務学会全国大会にて研究成果の報告を行う。そこでの議論を踏まえ加筆修正したものを、年度内に学会誌に投稿する。今回の研究テーマに関しては、2018年から2021年までの4年間で、少なくとも計5点の論文を発表予定である。それらを集め著書として出版予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ感染拡大の影響を受け、各地でのワークショップの実施が困難となり予定していたデータの収集が遅れた。また、2020年度中に予定していた別の調査、復職者ー非復職者の比較研究が実施できなかった。2021年はこの調査を中心に行う。ワークショップによる調査では、データ数は117と小さいため、2021年の調査では、調査会社に依頼し、復職者男女各200と非復職者男女各200と規模の大きいデータを集め、統計的分析の信頼度を高める。比較研究によって、復職者の人事評価の特徴及び問題点がより明らかになることが考えられる。 2021年7月には、日本労務学会全国大会にて研究成果の報告を行う(申し込み、報告文提出済)。そこでの議論を踏まえ加筆修正したものを、年度内に学会誌に投稿する。
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