研究課題/領域番号 |
18K01826
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
横井 克典 九州産業大学, 地域共創学部, 准教授 (50547990)
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研究分担者 |
東 正志 京都文教大学, 総合社会学部, 講師 (20436497)
富野 貴弘 明治大学, 商学部, 専任教授 (90366899)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際生産分業 / 二輪車産業 / 部品サプライヤーの国際化 / 戦略的拠点配置 / グローバルサプライヤーシステム / 資源配置の調整の仕組み |
研究実績の概要 |
本年度は,次の2つの実績をおさめた。 第1に,フィールド調査から得られた一次資料の整理・検討と二次資料の収集・検討作業を行い,二輪車産業においてグローバル市場での競争がいかに変容したのかを解明できた。平成30年度のフィールド調査およびこれまでの研究蓄積から,近年の完成車メーカーの海外展開の動向が,部品サプライヤーが抱える不確実性に大きな影響を及ぼし,その不確実性が国際生産分業の自律的編成を強く要請している点が判明した。そこで,本年度は次なるステップとして,完成車メーカーの海外展開の方針に影響を与えたグローバル競争の変容と,それに伴う各国・地域間における完成車・部品の国際的な取引(輸出入)の動態を明確化する作業に取り組んだ。この結果,二輪車産業のグローバル競争のあり方が,時が進むにしたがって,それぞれの国・地域における現地生産を中心として競争が展開されたピリオドⅠから,どの国・地域でいかなる二輪車をつくって供給するのか,すなわち国・地域間の二輪車供給を含めて競争するピリオドⅡへと移行しつつあることを明らかできた。こうした研究成果を,論文および書籍(編著)収録論文として公表した。 第2に,本研究の成果を一般化させていくことを見据えて,第1の作業と同時並行で自転車産業との比較・検討作業に取り組み,二輪車産業の特徴を明確にできた。加えて,今後,より多くの技術的な関連性の近い産業と比較・検討していくことを視野に入れて,自動車産業の部品サプライヤーの実態を蓄積するとともに,グローバル・サプライチェーンマネジメントの考察を行った。こうした研究成果の一端を,学会発表および書籍(編著)収録論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,申請時の研究計画にしたがって,①本研究の分析対象企業へのフィールド調査と,②二次資料を収集し,①とこれまでのフィールド調査から得られた一次資料を含めて検討作業を行い,研究期間の最終年度に発行予定の書籍に組み込める形で成果を公表(論文,研究ノート,学会発表)していくことを計画していた。 このうち,②は,「研究実績の概要」の第1の点で述べたように,十分に達成できた。この点については,当初の計画を上回るペースで進めることができていると考えている。 一方で,①はやや所与の計画よりも遅れている。研究メンバーで議論した結果,部品サプライヤーの実態を検討するためには,まずもって二輪車産業におけるグローバル競争の変容の解明作業を早急に実施する必要があることがわかった。そのため,本年度の前半から中盤にかけて②の作業を集中的に行い,中盤から後半にかけて①に取り組むことを予定していた。しかし,COVID-19が大きく影響を及ぼし,予定していた海外でのフィールド調査を断念せざるをえない状況が生じてしまった。それでもなお,「研究実績の概要」の第2の点で記載したような本研究の成果の一般化を見据えた研究蓄積を生み出すことができた。 このように,COVID-19の影響で①の海外でのフィールド調査はやや停滞してしまったが,総合的にみれば,当初の計画に対して概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,次の2点を中心に研究を進める。 第1に,申請時の計画にしたがって,先行研究・二次資料を収集し,これまでの研究蓄積と併せて検討を行い,成果(論文,研究ノート,学会発表)を公表していく。本年度の研究によって,部品サプライヤーを取り巻く環境を概ね明らかにできた。そのため,令和2年度は,近年,部品サプライヤーが抱えることになった問題(本研究のキーコンセプトである「不確実性の重層構造」)を整理し,先行研究や他産業の実態と照らし合わせて立体的に把握することに重点的に取り組む。この作業を通じて,部品サプライヤーが国際生産分業を自律的に編成する契機を浮き彫りにできると考えている。 第2に,本研究の分析対象企業に対するフィールド調査を実施する。令和2年度は「現在までの進捗状況」に記載した海外でのフィールド調査を併せて実施していく予定である。本年度に断念したフィールド調査先の企業に対して,COVID-19収束後の調査協力を取り付けている。COVID-19の影響が収まり,海外からの入国が再開された国・地域,かつ調査の受け入れが整った企業からフィールド調査を進めていく。 なお,COVID-19の影響が長引くことも想定できる。その際は第1の点を優先的に進める。もし仮に,令和2年度に海外でのフィールド調査が実施できない状況が生じた場合は,令和3年度に延期せざるをえない。こうした場合は,本研究の期間延長申請の可能性を含めて,研究メンバーと検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
[理由] 「現在までの進捗状況」でも記載したが,COVID-19の影響で,予定していた海外でのフィールド調査のほとんどが中止になったことが,次年度使用が生じた理由である。このため,本研究の経費の大部分を占める旅費の執行が大幅に滞る結果となった。なお,COVID-19という想定外の事態を受け,研究メンバーと検討を重ねて計画を組み直したため,現時点では全体の実施計画に遅れはない。 [使用計画] 繰越金額は,当初の計画どおり,海外でのフィールド調査(旅費)に充てる。COVID-19が収束次第,迅速にフィールド調査を実施していく予定である。
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