研究課題/領域番号 |
18K01830
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
江藤 学 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (30280902)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 標準化 / 中小企業 / イノベーション / アウトバウンド / 経営戦略 |
研究実績の概要 |
2019年度は研究二年目として、昨年度インタビューを行ったテーマに関する分析を継続すると共に、新たに指定されたテーマについて文献資料調査を進めると共に、幾つかのテーマについてインタビューを実施した。その結果として、新市場創造型標準化制度は、その利用形態が大きく変化しつつあることが発見された。当初3年間で指定されたテーマの多くは、他社が進出する前に自社で市場を独占してしまうことを目的として標準化が活用されており、このため、制度成立早々に指定を受けることを狙ったものが多かったが、制度開始から数年がたち、応募されるテーマの目的として「既存の強硬な規制を打ち破るための前段階としてのJISの利用」を目指すものが増えてきた。つまり、直接的な規制改革は中小企業にとって壁が高いものの、本制度を使えばJISの作成・発行が可能であり、そのJISを梃子に、規制の改革を訴えていく手法である。特に建築関係・医療関係の規制に対抗するため。JISによる任意の基準をまず制定することを目指したものが多くなってきていた。2019年度は、このような成果を取りまとめ、次年度にむけて検討を進めることとした。 なお、2018年度にInternational Journal of Standardization Research(IJSR)誌に投稿した論文は、何度かの査読を経て、2019年度内に受理された。 "The Business Effects of Standardization for SMEs," International Journal of Standardization Research (IJSR) また、EURAS2019において、関連の発表を行った。” Influence of Photocatalytic Technology Standardisation”EURAS2019
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の成果を取りまとめた論文を投稿し、2019年度はこの論文の修正が順調に進んだことで、論文の受理に至った。また、新たなテーマの開始に伴う調査の過程で、参加企業における標準化の目的が変化しつつあることを発見し、これに沿って全テーマを見直したところ、その傾向が明らかになった。このため、分析の視点を、「制度設立からの制度利用目的の変化」とした分析を新たに立ち上げることとし、そのための既存研究のサーベィなどを実施した。 このように、新たな分析の視点を加えたことから、研究成果のとりまとめを再度行う必要があり、2019年度は、国内学会での発表を見合わせることとした。国際学会では関連のテーマについて発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今回発見された、規制改革のためのJIS規格の利用という行為は、これまで業界団体が一致した形で利用することはあったが、中小企業が単体でこの手法を利用することは無かった。しかし、新市場創造型標準化制度の設立により、中小企業が自らの力で既存規制を変更していくツールを獲得することができたと考えることが出来る。 但し、この裏には、採択件数を増やしたい日本規格協会の活動もあり、誰がどのようにこのような手法の使い方を展開していったのかは未だ明らかではない。 2020年度は、インタビュー調査を充実することで、このような制度の利用方法がどのように生み出され、指導されてきたのかを明らかにし、その応用範囲の拡大を図っていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度にインタビュー件数が少なかったため未使用繰越があったが、2019年度は論文執筆費用を中心に順調に消化した。このため繰越額は減少している。
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