研究課題/領域番号 |
18K01830
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
江藤 学 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (30280902)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 標準化 / 中小企業 / 新市場創造型標準化制度 |
研究実績の概要 |
経済産業省が推進している、新産業創造型標準化制度に採択されたテーマについて、中小企業における標準化がビジネスに与える効果を、特にマイナス面に注目しつつ収集し分析することをテーマとして研究を進めている。このため、毎年その年の新規採択分の企業にインタビュー調査を行い情報の蓄積を進めていたが、2020年度はコロナ感染の広がりで、インタビュー調査等を行うことが全くできなかった。2020年度採択分のみならず、過去の採択分の追加調査も予定していたが、全く実施することが不可能であった。 このため、2020年度は、これまでに収集したデータの分析と整理、公表資料の作成を行うこととして、様々な作業を行った。 具体的には、2021年度以降に出版する予定の研究書に掲載することを目標として、これまでに収集した多くのケースデータの再分析を行い、中小企業における標準化活動のビジネスインパクトについて、様々な側面から、その功罪をあぶり出すこととした。特に、重要なケースとしてこれまで取り上げてきた13ケースの再分析を進め、その中から、規制緩和を導き出すための標準化の利用、使用されることのほとんどない製品を高付加価値化するための認証の活用など、いくつかの新しいビジネス関連のインパクトを発見することができた。 これらの発見については、「中小企業における標準化活動」という形で著作化を進めた。さらに、経済産業省で基準認証業務に長く携わった専門家に協力を仰ぎ、この著作化した中小企業における標準化インパクトの内容のチェックや校正を依頼した。これによって、外部に公表できる形での資料の作成を実現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度に投稿した中間的な成果である“The Business Effects of Standardization for SMEs”は、『International Journal of Standardization Research 』に採択され、2020年度に掲載された(掲載日付は2019年となった) 2020年度は、2019年及び2020年に新規追加されたテーマについてインタビュー調査を行い、これまでのデータに加えたうえで横断的分析を進める予定であったが、コロナ渦で必要なインタビュー調査が全く行えなかった。インタビュー対象が中小企業であることもあって、オンラインでの会合等も困難であり、2020年度については、インタビューによるケース情報の追加はあきらめることとした。 このため、2020年度の活動としては、文献調査による既存テーマの動向や新規テーマの情報を収集することと、国内向けの報告を取りまとめることに集中することとした。この取りまとめは順調に進み、報告書の原案を作成することはできた。この結果については2021年度以降に出版物として公表する方向で作業を継続している。 以上の状況から、研究の進捗については、分析・取りまとめについては十分に進捗しているものの、2020年度に新規テーマのインタビュー調査を加えることができなかったことを鑑み、(3)やや遅れている、との評価とすることとした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2020年度に行ったとりまとめ成果を出版等の形で公表することとし、この活動を継続する。並行して、当初計画通り、2019年度以降の新規テーマについて、インタビュー調査等を試みる予定ではあるが、2021年度もコロナ渦の影響は避けられず、どの程度新規テーマの情報を入手できるかは全く未定である。 仮に、新規テーマに対するインタビュー調査が実施できない場合でも、新規テーマに関する文献調査等は実施し、これまでの研究成果を活用し、そのパターンを解析していくことは可能と考えている。制度開始当初の2~3年に比べ、ここ数年の新規テーマは、その内容が「岩盤規制」を崩していくための第一歩として標準化活動を行うようなタイプが増加していることを感じており、このようなタイプにおける標準化活動の効果を詳細に分析できれば、一定の成果といえるものができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦によりインタビュー調査が行えなかったため、旅費等の支出が全くなかった。2021年度は、実施が遅れたインタビュー調査が可能であれば実施したい。
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