研究課題/領域番号 |
18K01830
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
江藤 学 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (30280902)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 標準化 / 中小企業 / 新市場創造型標準化制度 |
研究実績の概要 |
本研究では、経済産業省が推進している、新産業創造型標準化制度に採択されたテーマについて、中小企業における標準化がビジネスに与える効果を、特にマイナス面に注目しつつ収集し分析することをテーマとして研究を進めることとしている。このため、研究開発当初は、その年の新規採択分の企業にインタビュー調査を行い情報の蓄積を進めていたが、2021年度は、2020年度に引き続きコロナ感染の広がりで、インタビュー調査等を行うことができなかった。 このため、2021年度は、新規テーマに関する文献調査を進めつつ、2020年度に引き続き、これまでの研究成果の取りまとめと普及に注力することとした。 具体的には、2020年度に開始した成果の整理を継続し、2021年7月に標準化ビジネスモデルの数多くのケーススタディの集大成として「標準化ビジネス戦略大全」を出版した。本書には、新産業創造型標準化制度で採択された事例20事例程度について、濃淡はあるものの、その研究成果を整理し、以前の科研費で行った研究成果とも合わせて分析を進めることで、標準化を活用したビジネス戦略を検討する上での貴重な研究書を作成することができた。 特にこの書には、本研究の成果が数億反映されており、「中小企業における標準化活動」に関する総論を取りまとめるとともに、それぞれの事例の特徴をビジネス戦略的観点から分析し、「逆移転の戦略」という視点で整理することができた。 8月以降はこの書の普及と、そこでの分析に対する意見徴収を目的として、様々な場で発表、セミナー、記事執筆などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、本研究成果を取りまとめた「標準化ビジネス戦略大全」を出版し、これを普及することができたため、「中小企業における標準化がビジネスに与える効果を、特にマイナス面に注目しつつ収集し分析する」研究を一応の形で取りまとめることには成功した。しかし、コロナの影響で新規テーマに対するインタビュー調査などは進んでおらず、当初に収集した事例や、文献調査を中心とした分析となっている。 以上の状況から、研究の進捗については、分析・取りまとめについては十分に進捗しているものの、新規テーマのインタビュー調査を加えることができなかったことを鑑み、(3)やや遅れている、との評価とすることとした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、本研究テーマの最終年度の位置づけである。本来2022年度に行うことを計画していた「とりまとめ成果の出版・普及」等は、コロナ禍を受け、2021年度に前倒しで実施した。2022年度は、ここまでの成果に新たな事例の情報を加えることで、より新たな発見を得ることが可能になる可能性がある。 このため、2022年度は最終年度でありながらも、これまでに実現できなかったインタビュー調査をできる限り実施し、これまでの分析結果と照合していくことで、これまで行ってきたとりまとめの内容を確認していくとともに、新たな発見を模索することとする。 特に、2021年度の文献調査では、ここ数年の新規テーマの目的が、制度開始当初の「特定小規模市場を独占するための標準化」が減少し、「岩盤規制を崩していくための標準化」を目的として活動しているケースが増加していることがわかった。これらのケースに対してインタビューを行うことで、中小企業の標準化目的として「ルール作りのための標準化」という新たなビジネスモデルを提示できる可能性が高いと考えており、このような様々なタイプの標準化活動効果を整理分析することで、一定の成果をあげることができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によりインタビュー調査が行えなかったため、旅費等の支出が全くなかった。2022年度は成果取りまとめのための最終年度ではあるものの、2020年度、2021年度に実施ができなかったインタビュー調査もできる限り実施し、成果に加えたい。
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