研究課題
2019年度に続き2020年度も,「研究の目的」に明記した3つの調査のうち,(1)日本企業のビジネスパーソンへの質問票調査・インタビュー調査、(2)人事データと実際の評価フィードバック場面の分析を行なった。(1)については,2019年に株式会社島津製作所との共同研究で取得した人事評価と評判について,2時点めの測定を行い,「優秀さ」を検出するための2つのメカニズムの比較,また(2)については,そうした測定された「優秀さ」を当人にフィードバックすることで,どのような気づきを得るのか,ということを分析した。これらの分析によって,大きく分けて2つの成果を得ることができた。1つ目は,2018年そして2019年の調査の中で見出された,「人事評価」と「評判」とが,どのように異なるのかということを統計的に解析することである。組織の中で公式的に,組織階層上の上司によって行われる評価である人事評価と,よりインフォーマルに周囲の人々によって行われる評判とが,それぞれどのような特徴を持った個人を検出するのか,またこれらは相互にどのくらいの相関を持っており,それらの間の相関は時間の経過によってどのように変わっていくのか。こうした点を分析した。成果は2本の英語論文,2本の日本語論文としてまとまり,そのうちの3本は査読中,1本はすでにパブリッシュされている。2つ目は,そのようにして測定される人事評価と評判を計量化し,当人にフィードバックすることで,当人はどのような情報に注目し,そこからどのような情報を読み取るのか,ということを明らかにすることである。フィードバックのプロセスそのものを定性データとして記録し,分析することで,人々が種々の情報のうち,なぜ,何に注目するのか,ということを明らかにすることを目指したのである。こちらは現在,論文執筆中である。
2: おおむね順調に進展している
covid-19の影響により,当初予定していた研究成果報告ための海外渡航がなくなるなど,計画に若干の変化は生じたが,研究の進捗そのものは極めて順調である。すでに2018年の段階で見出されていたことではあるが,「人事評価のフィードバック」という当初のプランに加えて,「組織の中の評判」というもう一つの論点を見出したことで,研究にかなりの厚み/幅が出たと考えている。
最終年度である2021年度においては,一連の研究活動の総括として,成果の発表を積極的に行っていきたい。研究の進捗そのものは,予定よりも早く進んでいるため,2021年度のリソースのかなりの部分をアウトプットにさくことができる予定である。アメリカ経営学会,国際心理学会での発表にすでにアクセプトされており,今後はそれに加えて,国内の学会にもエントリーをする予定である。加えて,すでに国内外のジャーナルに投稿している複数の論文について,5本の論文について,フェレリーコメントに応えつつアクセプトまで進めていきたい。
海外学会発表や海外の研究者との打ち合わせのため,海外に複数回渡航する予定であったが,covid-19の影響によりそれがかなわなかった。学会発表と打ち合わせ,いずれもオンラインで実施したため,研究費の使用に遅れが生じた。ただし,研究の進捗自体に遅れはない。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
国民経済雑誌
巻: 222 ページ: 1-25
日本労働研究雑誌
巻: 729 ページ: 63-68
一橋ビジネスレビュー
巻: 68 ページ: 96-113
組織科学
巻: 53 ページ: 38-50
日本情報経営学会誌
巻: 40 ページ: 188-200
一橋大学イノベーション研究センターWP
巻: 20-11 ページ: 1-69