研究課題/領域番号 |
18K01832
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
岸 保行 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (50454088)
|
研究分担者 |
浜松 翔平 成蹊大学, 経済学部, 准教授 (00751257)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 日本酒 / 輸出 / 現地生産 / 海外市場 / Sake / 流通 |
研究実績の概要 |
2019年度は、2018年度に実施してきた国内と海外でおこなった調査の結果をワーキングペーパーにまとめる作業をおこない、調査結果の整理をおこなった。 また、2018年度までの調査結果を国際学会(EGOS:European Group for Organization Studies)のクラフト研究のセッションで発表をおこなった。発表後のフロアとの質疑応答では、特定の文化や歴史に埋め込まれたクラフト製品が、海外の異なる文化的文脈の中で生産されるようになることが、従来の伝統的な文化的なクラフトの国内市場へ与える影響は大きいのではないかといった大変に示唆に富む助言を得た。そのため、国際学会で得た助言に基づき、再度、海外で生産されているクラフト生産拠点の調査をおこなった。具体的には、台湾でSakeを現地生産している霧峰農協酒蔵の再調査をおこなった。どのような経緯でSakeの酒蔵が台湾の地で創設されたのか、伝統的な日本酒をどのようにとらえて生産しているのかについて再度現地調査を実施した。 また、国際学会では、輸出が国内市場に与える影響についての質問も受けた。そのため、日本酒の海外展開と国内市場との関連性に関する視点も入れ込み、再度、国内の酒蔵へ輸出に対する取り組みについてのヒアリング調査を実施した。その調査成果については既に国内学会で発表済みである。 さらに、日本酒の輸出の初期に結成された日本酒輸出協会という民間団体の代表者へのヒアリングをおこない、戦後、日本酒が海外に輸出されるようになってきた背景から、近年の最新の動向に関する概略について、特に流通の観点からのヒアリングをおこなった。2018年度には中国北部のSake市場調査を実施し、2019年度には中国南部のSake市場調査を予定していたが、その調査を2019年度の後半に予定していたため、Covid-19の世界的な感染拡大の影響で調査中止を余儀なくされてしまった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、夏と春の2回に分けて集中的に調査を実施する予定であった。夏に予定していた調査は予定通り実施できたが、春に予定していた調査については、Covid-19の影響により国内・海外ともにすべての予定していた調査がキャンセルとなってしまった。具体的には、国内ではSake消費の最大市場である米国への輸出をおこなっている商社の国内拠点へのヒアリングや国内の酒蔵への継続的な調査、さらには、近い将来に、米国を抜いて世界最大のSake消費地になるであろうと言われている中国の南部地方の市場調査がキャンセルとなってしまった。そのため、2019年度は予定していたすべての調査を完結することができなかった。 これらの調査は、2020年度にCovid-19の影響が縮小してきた頃を見計らって実施することになる。春に予定していた調査はすべてキャンセルとなってしまったものの、2019年度は、2018年度に実施した調査の結果を整理し論文やケースにまとめたり、国際学会で研究の途中経過を報告して海外研究者とディスカッションしたりすることで、研究を深めることはできた。 最終年度である2020年度には、2019年度にやり残した調査を実施して、これまでの研究の総まとめを行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、2020年度は最終年度になるため、研究の1年目と2年目に収集したデータの分析をおこない、日本酒の海外市場への輸出のパターンを理論化する。ただし、2年目である2019年度には、Covid-19の影響により、予定していたすべての調査を完了できなかったため、2020年度には2019年度にやり残した調査を実施する。やり残した調査を実施・完了することで、以下の3つの関係者への調査データが揃う。 ①国内の輸出酒蔵と海外生産拠点(海外市場での販売を見据えてどのように生産をおこなっているか) ②輸出商社、海外インポーター、ディストリビュ-ター(海外市場へどのように流通をおこなっているか) ③海外のレストラン・小売店 これらの3つの関係者への調査データを分析し纏めることで、文化製品としての日本酒の海外市場での浸透メカニズムを明らかにする。具体的には、日本酒の海外での普及において、消費者まで3つの情報、すな わち、生産段階で生成される「(1)生産情報」、流通段階で生成される「(2)分類情報」そし て消費段階で生成される「(3)適合情報」がどのように生成・付加されて伝播するのかという浸透のメカニズムを、生産・流通・販売・消費の異なる 領域を繋ぎ、日本酒の海外市場での浸透メカニズムについて、体系的な成果としてまとめ上げる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2019年度の春に予定していた国内外の調査がCovid-19の影響によりすべてキャンセルとなったためである。具体的には、国内の輸出酒蔵、輸出商社へのフォローアップ調査と中国南部のSake市場調査である。 2020年度もCovid-19の影響が出ているため、これらの調査をどの程度実施できるかは未定であるが、次年度に使用が生じた研究費は、これらの調査に全額使用する予定である。
|