本プロジェクトの最終年にあたる2021年度においては、前年度に続き、研究分担者、研究協力者がオンライン会合を定期的に実施し、相互に連絡・調整しながら、共同研究作業を実施することができた。具体的には、以下の通り、本研究プロジェクトを推進することができた。 まず、国内部品取引構造の分析については、本プロジェクトで整備した1984年から2016年にかけての部品取引パネルデータを用いて、取引の継続・解消、系列関係の継続・解消、取引量などに影響を及ぼす要因を分析する作業を進めることができた。また、技術的に成熟した伝統的な部品と技術革新が進んでいる新規の部品を取り上げて、系列関係を含む取引構造の変化のパターンを比較分析する作業も進めることができた。 2021年度における主要な成果は、パネルデータから、設定した基準により8部品を選定し、対象企業の合併買収による変更を踏まえた名寄せ作業を行った上で、各部品・各年における全ての部品メーカー(売り手)と自動車メーカー(買い手)間の取引実績を被説明変数とし、部品メーカーの競争力、取引継続性、系列関係を説明変数とするハイブリッド法によるパネルデータ分析を実施したことである。これは市場全体における取引構造をめぐる詳細な時系列データを定量的、体系的(固定効果と変量効果の同時推計)に実証分析したものとして、学術的に有意義な成果であると考えられる。 また、海外部品取引構造の分析については、2019年度末に実施した日本自動車部品工業会会員企業を対象にした「部品の設計・製造および納入先メーカーとの関係に関する質問票」調査について、回収率をあげるため、感染症の影響が小さくなったタイミングで再度調査を実施し、追加で50社から回答を得て、合計107社のサンプルを得ることができた。これに基づき、国内取引と海外取引の関係などについて予備的な分析を進めることができた。
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