世界的にイノベーションの必要性が高まる中で、一部の企業によるデザイン活動の活用による成功が、デザインへの関心を急速に高めている。しかしながら、デザイン活動の範囲が確定しにくいこと、それに伴ってその成果だけではなく、投入に関しても定量化が困難であることから、デザインの経済効果の計測法は一般化できるほどには十分に開発されてはいない。このためにデザイン活動への資源の投入が必ずしも十分に行われていないのではないかとの指摘されており、その計測法の開発は急務である。そこで本研究では意匠権の書誌データを用いて、企業内におけるデザイン活動への投入状況を明らかにするとともに、それが企業のデザイン成果および企業パフォーマンスへの効果を計測する手法に関する知見を得ることを目的とした。 まずデザイン活動に関するデータを企業の財務パフォーマンスと照合を行い、これまでの研究で既にデザイン活動の投入状況および成果と企業の財務パフォーマンスの関係については、一定の成果を得た。更にデザイン活動と同様にその投入量と成果を直接的に計測することが困難な研究開発活動の経済効果を計測するために用いられる生産関数を用いる手法をデザイン活動に応用することを試みた。これにより、所有意匠権数を代理変数としたデザイン活動が企業パフォーマンスに与えている影響を計測することが可能となった。また、その際には、デザイン活動の量だけではなく、その質や構造を考慮する必要があることも明らかとなった。
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