研究実績の概要 |
企業・組織による不祥事・大惨事が繰り返されている。企業・組織による不祥事・事故が起こるたびに,メディア等で非難され、企業倫理及び企業の社会的責任論,組織論,安全学等で個別に分析・研究がなされてきた。しかしながら,実務においては,その知識が学習されてないのではないかという「問い」にもとづき本研究を始めた。 国際学術誌・国際機関においても,これまでチェルブイリ原発事故を社会科学的に研究し,警告してきたのに,なぜ,原発事故を先進技術・科学立国の日本で繰り返したのかと批判している。本研究では,企業・組織による不祥事・惨事を繰り返さぬために,「過去の実践」から現在・将来への実践への学習理論の発展を目指す。
本年度は、研究1として、企業・組織による不祥事・大惨事に関する研究・事例を調査した。具体的には,企業・組織による不祥事・大惨事 に関する研究のクリティカル・レビューを行った。とくに、企業・組織による不祥事・大惨事の研究で、「病理」という発想をとり入れた安全学の見解に着目した。この見解によれば、不祥事・大惨事を引き起こす企業・組織には、「常駐病原体」と呼ばれる組織の特性が存在する。これは、医学の発想によるものである。さらに、常駐病原体がいる企業・組織に、なんらかの外的な要因が加わることにより、不祥事・大惨事が起こるというモデルもある。従来の研究では、この常駐病原体は、組織のシステム的要因として根付くと考えられていた。しかしながら、本研究では、文化的要因として根付き、「体質化」するメカニズムに着目した。
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