研究実績の概要 |
企業による不祥事・大惨事が繰り返されている。不祥事・事故が起こるたびに, 企業倫理及び企業の社会的責任論, 組織論, 安全学等で個別に分析・研究がなされてきた。しかしながら, 実務においては, その知識が学習されないのはなぜかという「問い」にもとづき、本研究を始めた。本研究では, 企業不祥事・惨事を繰り返さぬために, 「過去の実践」から現在・将来への実践への学習理論の発展を目指し, 越文化的学習 (transcultural learning) を促進するための方法論を構築し, その効果を確かめる。 本年度は、研究2の延長として、前年度行った企業による不祥事・大惨事に関する, 学習 (learning) もしくは反省性 (reflexivity) を促す研究のクリティカル・レビューをもとに、不祥事の中でも、贈収賄に焦点をあて、比較・越文化的視点から、考察した。比較文化的な視点として、特に、宗教からの影響に着目した。具体的には、イスラム教からの影響に焦点を当てた。また、不祥事の中でも贈収賄行為に及んだ当時者がその行為を合理化(rationalize)・正当化(justify)するメカニズムについても探究した。筆者(Chikudate)の集合近眼(collective myopia)理論、AnandとAshforth等の正常化(normalization)理論に加え、Husserlの現象学、Schuetzの現象学的社会学にもとづく方法論により探究した。 研究成果として、Global Ethics, Compliance & Integrity Yearbook 2021に一章として掲載されることになった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に記載した研究3.「企業による不祥事・大惨事を過去から学習するための方法論」を探究する。 ケース法により,「過去の実践」から「概念・理論」への知識の循環ならびに「現在・将来への実践」への学習を促す仮モデルを作成する。「過去」から現在, そして将来への学習を促す方法を構築する。さらに, 研究2で得た知見と合わせ, 計量的手法でいう外的妥当性(一般化)ではない, ケースの「普遍化」の可能性を探究する。
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