研究実績の概要 |
企業による不祥事・大惨事が繰り返されている。不祥事・事故が起こるたびに, 企業倫理及び企業の社会的責任論, 組織論, 安全学等で個別に分析・研究がなされてきた。しかしながら, 実務においては, その知識が学習されないのはなぜかという「問い」にもとづき,本研究を始めた。本研究では, 企業不祥事・惨事を繰り返さないために, 「過去の実践」から現在・将来への実践への学習理論の発展を目指し, 越文化的学習 (transcultural learning) を促進するための方法論を構築し, その効果を確かめる。
本年度は,研究3として,比較・越文化的アプローチをとり,不祥事の中でも,贈収賄に焦点をあて,考察した。比較文化的なアプローチの中でも,宗教からの影響に着目した。現象学に基く方法論を取り,不正行為を行った当時者たちが共有する「生活世界」(原語Lebenswelt,英語life-world),「生の体験」(lived-experience)を分析した。その結果,不正行為に及んだ当時者達がイスラム教の教義を自己都合で解釈し,不正行為を便法として合理化するメカニズムが明らかになった。また,「社会化」により他者にも合理化することを学習させ,組織,業界の文化・制度として浸透するメカニズムも明らかになった。日本企業社会で不祥事を誘発する集合近眼(collective myopia)という筆者(Chikudate)が提唱した病理構造がイスラム圏でも存在し,説明的妥当性を得ることができた。よって,通文化理論として発展させるべく考察を行った。
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