本研究の目的は、戦略と人的資源管理の適合が従業員の行動と組織業績に与える影響を明らかにすることである。より具体的に言えば、本研究課題の最終的な目標は、人的資源管理と組織業績との間にあるブラックボックスについて、一定の知見を得ることにおいてる。ブラックボックスに関連する変数としては、従業員の心理や行動、諸制度、資源、戦略など多様なものが考えられるが、初年度は、主に従業員の心理や行動に焦点を当てて考察した。2年目となる本年度は、引き続き調査を進め、ブラックボックスに関連する変数として、リアリティショックや私生活に関する満足度、会社のWLBなどに対する取り組みや組織的公正、コミットメントなど様々な変数についてデータを収集しすることができた。リアリティショックや私生活に関する満足度など、一見すると本研究の枠組みと直接的に関連しそうではない変数について取り扱う理由は、企業や上司の方針に沿った役割行動をとることに対して、「割に合っているか」「自己犠牲の感覚」「私生活の充実」などが影響を与えている可能性があることが、インタビュー調査で明らかになったからである。これらのデータの分析結果は、今後論文や学会発表で公表していくことになるが、初期的な分析では、これらの変数が従業員の行動や心理に対して影響を与えていることが示されている。なお、2019年度に行った日本経営学会での学会報告では、組織の公平性の知覚や戦略の明示などがコミットメントなどに与える影響を明らかにすることができた。
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