本研究は、戦略と人的資源管理の適合が従業員の行動と組織業績に与える影響を明らかにすることを目的としている。より具体的に言えば、本研究課題の最終的な目標は、人的資源管理と組織業績との間にあるブラックボックスについて、一定の知見を得ることにおいてる。ブラックボックスに関連する変数としては、従業員の心理や行動、諸制度、資源、戦略など多様なものが考えられる。初年度は従業員の心理や行動に焦点を当てて考察した。2年目以降、いくつかの調査を実施し、大量サンプルを収集することができたが、コロナ禍ということも影響し、当初予定していた調査をすべて実施することはできなかった。 研究期間における研究成果は、論文としては「戦略とHRMの一致が手続的公正の知覚に与える影響」、「戦略と人事の適合関係と公正感」、「非正規雇用における「非」労働条件の影響 : 組織的公正とビジョンの観点から」などがあり、主に戦略とHRMとの整合性が従業員の心理や態度に与える影響を明らかにしている。また、2021年度に執筆した論文は、現在査読中であり、今回の成果としてはあげていない。 2021年度の研究成果としては、投稿中の論文のほか、「戦略とhigh-involvement HRMが企業のパフォーマンスに与える影響」組織学会組織調査2020シンポジウムをあげることができる。ここでは、企業の採用する競争戦略によって、high-involvement HRMが企業の営業利益率に与える影響の仕方が異なることを明らかにした。
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