HRM施策と企業業績の間の相関関係は多くの研究で確認されているが、因果関係はほとんど検証されていない。本研究の学術的意義は、交差遅れ効果モデル分析によって因果関係を明確に示したことである。循環的な因果関係ではないものの、企業業績からHRM施策への影響だけが見られたことは、HRM施策が企業業績を高めると想定する戦略的人的資源管理論に対して理論的見直しを迫るものである。また、HRM施策から業績への影響が欧米企業の調査では確認されていることからすると、今回の結果は日本企業のHRMの戦略性の低さを示唆している。その点で、日本企業のHRM改革に向けた実践的意義を持つ。
|