研究課題/領域番号 |
18K01844
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研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
八木 規子 聖学院大学, 政治経済学部, 准教授 (20817382)
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研究分担者 |
古谷野 亘 聖学院大学, 心理福祉学部, 教授 (90150747)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ダイバーシティ / 質的研究 / 中小企業 / 外国人 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
2018年度は、質的研究においては、協力企業での新規データの収集を開始するに至らず、既収集のデータの再分析を行なった。再分析にあたっては、国内外の学会で学んだ、ダイバーシティ&インクルージョン関連の最新研究の動向を参照した。その結果、複数のダイバーシティ属性の境界を組織成員がどのように認識しているかという観点、また、個人を複数のダイバーシティ属性の複合体とみる視角が得られた。さらに、こうした視角から定性的データを分析、結果を提示する手法として、物語による探索(narrative inquiry)が有用ではないか、との考察に至った。物語による探索は、experience-near概念(現場で働く当事者たちの言葉で表現されるダイバーシティ経験)とexperience-distant概念(研究者が考案した抽象的なダイバーシティ理解のための概念)をつなぐことを可能にしうると考えられるからである。 複数のダイバーシティ属性の境界を組織成員がどのように認識しているか、という観点については、2018年5月異文化経営学会International Sessionにおいて英語報告を行なった。また、個人を複数のダイバーシティ属性の複合体とみる視角の有用性と物語による探索の可能性を論じた報告を、2018年12月異文化経営学会第2回研究大会において行なった。 量的研究面では、サブグループ間で複数の多様性属性が複合的にどのような影響を与えるかを図る概念として考案された「フォールトライン」に関する先行文献の中から、尺度や計算方法を比較する上で参考になりそうな論文の絞り込みを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れている側面は、質的研究のフィールド調査である。新たなフィールド調査の開始に先立つ諸手続き(学内の研究倫理審査申請など)に着手するのが遅れたためである。質的研究の進捗の遅れにより、量的研究もアンケート調査の設計が進まなかったため、予備アンケート調査の実施を見送った。
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今後の研究の推進方策 |
新規データの収集が遅れる中、既収集のデータの再分析を進め、「複数のダイバーシティ属性の境界を組織成員がどのように認識しているか」また「個人を複数のダイバーシティ属性の複合体とみる視角」が得られた。また、質的研究手法で収集されたデータの分析方法として「物語による探索」の有用性を発見した。2019年度は、協力企業でのフィールド調査を再開し、新たな収集データを、先述の観点と物語による探索と結びつけることにより、質的研究面で具体的な成果を出すこととする。 量的研究では、欧米で開発されているさまざまな尺度の比較研究を、文献調査により進めるとともに、質的研究の一次的な結果をもとに、アンケート調査の基となる仮説構築に取り組む。2019年度は、少なくとも予備アンケート調査の実施まで進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主たる理由は、協力企業での新規データ収集を開始しなかったことにある。このため、フィールド調査旅費、テープ起こし費用が発生しなかったこと、またそれに伴い、アンケート調査も後ろ倒しとなり、予備アンケート調査を実施しなかったためである。2019年度は、フィールド調査を再開する予定であり、これにより、次年度使用額および翌年度分として請求した助成金は、調査旅費、テープ起こしの費用、また、量的研究におけるアンケート調査実施費用として使用する予定である。
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