研究課題/領域番号 |
18K01846
|
研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
齋藤 泰浩 桜美林大学, 経済・経営学系, 教授 (50296224)
|
研究分担者 |
竹之内 秀行 上智大学, 経済学部, 教授 (90297177)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 立地選択 / LOF |
研究実績の概要 |
本研究課題の中心的な目的は新型ダイナミックLOF(Liability of Foreignness=外国企業であることによって被る不利益)の再検討ならびに改良にある。企業は距離=LOFを勘案しながら立地選択を行う。立地選択研究でも根本的な仮定として据えられてきたLOFは、Zhou&Guillen(2014) によって本国からの距離でなくホームベースからの距離として再定義され、進出先国のみならず事業経験を蓄積してきた国の組み合わせを考慮し、ホームベースと進出先国の間の距離が企業の国際拡張につれて変化する動態的な概念として捉え直さるようになってきた。 この新型ダイナミックLOFを改めて丹念に検討する計画であった2018年度の成果の1つとして、国際両利きの視点が本研究課題をより興味深いものにすることを発見したことが挙げられる。March(1991)の探索・活用フレームワークをベースに、明示的に国際両利き概念を導入したPrange&Verdier (2011)は探索的国際化と活用的国際化のどちらも国際化パフォーマンスの向上には必要であると論じている。技術的な後れや本国の未発達な制度といった特徴を持つ新興国多国籍企業に限らず、企業の国際化は既存の優位性の活用によってのみドライブされるのではなく、グローバル競争力を強化したり長期的なパフォーマンスを向上するような経営資源の探索によってもドライブされる。新型ダイナミックLOFを検討するうえで、とりわけパフォーマンスへの影響を検討する際、この国際両利きの視点(国際化の動機ならびに戦略)を取り入れる必要があるだろう。加えてLavie&Rosenkopf (2006) の探索・活用の3つのドメイン(価値連鎖活動、構造、属性)からは新型ダイナミックLOFを改良する際の経験を考慮するうえでヒントを得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】で述べたように、2018年度の計画の1つであるダイナミックLOFに関する研究の網羅的なレビューについては、国際両利き研究まで範囲を広げながら一定の成果があった。たとえば、Deng,Liu,Gallagher&Wu (2018の3つの両利き国際化戦略、順次的国際両利き1(活用→探索)、順次的国際両利き2(探索→活用)、構造国際両利き(探索と活用を同時に行う)、のうちのどの戦略を採用するかによって立地選択行動も違ってくると予想される。そして、この両利き国際化戦略はわれわれが想定している改良型の新型ダイナミックLOFと立地選択行動の関係にも影響を及ぼすと考えられるのである。また、Huang&Cantwell(2017)は、従来の立地選択研究は立地意思決定を不確実性回避とベネフィット最大化として理論化してきたが、将来の不確実性に対処できるのは立地両利きの高さであると論じている。ある立地が提供する柔軟性を把握すべく提唱された新しい立地特性である「立地両利き」も本研究課題にとって興味深い概念の1つといえよう。 引き続き、新型ダイナミックLOFの再検討と並行して国際両利き概念についても検討を加えていくが、そのことが2018年度の計画の1つであったデータベースの構築作業の遅れにつながったことは否定できない。事業経験の内容、経験の積み方、経験の減耗や忘却の可能性、立地選択の際に参照の対象となる側の企業の属性などを考慮した改良型の新型ダイナミックLOFのモデルづくりを進めるとともに、データベースの構築を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】で述べたように、2018年度後半の計画の1つであるデータベースの構築作業の遅れを取り戻すとともに、2019年度以降の計画として示してあった構築したデータベースを用いた大規模サンプルによる実証分析を行い、早ければ研究の成果を論文や学会発表の形で世に出していく(担当:齋藤・竹之内)。データベースの構築作業は市販のデータを単に入力するのではなく、各社ホームページ情報や日経テレコン等と照らし合わせる確認作業も伴うため非常に時間と手間がかかるので、作業補助者に協力してもらいながら丁寧に進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データベースの構築作業の遅れが最大の原因である。2018年度後半にデータベースの構築を始めるべく、データとデータを整理するためのパソコンを購入した。パソコンについては、共同で作業をする場所に常時置いておくと作業補助者が作業を行う際も都合がよいことに加え、代表者の所属学群のキャンパス移転により今春研究室を使用できない時期があったため、ノートパソコンを購入したことは正解であったが、肝心のデータベース構築作業が遅れてしまったことにより、人件費が余る形となった。データベース構築作業(とくにデータの収集と整理)には多くの時間と労力が必要なため補助が必要となる。遅れを取り戻すことは意識しながらも、作業補助者には各社ホームージ情報や日経テレコンと照らし合わせる確認作業など丁寧に作業を進めてもらう。
|