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2019 年度 実施状況報告書

新興国における立地選択行動とダイナミックLOF

研究課題

研究課題/領域番号 18K01846
研究機関桜美林大学

研究代表者

齋藤 泰浩  桜美林大学, ビジネスマネジメント学群, 教授 (50296224)

研究分担者 竹之内 秀行  上智大学, 経済学部, 教授 (90297177)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードLOF / 距離 / 立地選択
研究実績の概要

2019年度は本研究課題の第1の目的、新しいダイナミックLOFの検討に関して3つの成果があった。まず、新型ダイナミックLOFの面白さは立地選択前までに蓄積した海外経験を考慮に入れる点にあるが、時間加重距離(WAD)よりシンプルではあるものの、同じく海外経験を盛り込んだ「追加された距離(AD: added distance)」(Hutzschenreuter&Voll,2008)を発見した点である(①)。Hutzschenreuter et al.(2015)はIB研究における距離概念の将来の研究への提案の1つとして本国以外の基点を挙げている。過去に進出した国のなかでもっとも近い国を基点とし、新たに設立される海外子会社の立地する国までの距離が文字通り追加された距離となる。WADと異なり、経験の長さを考慮していないが、Cuypers et al.(2018) でも将来の概念化として紹介されており、重要な先行研究に加える。
次に地域レベルのLOF(LCF)とも呼べる、地域を越えてビジネスを行うコストと定義されるLRF概念の導入である(②)。大半の企業が持つホーム地域からの距離で測定されるLRF(Qian et al.,2013)のように、国レベルではなく、クラスターで捉えるアプローチは文化的距離をめぐって採用されてきたが(Barkema et al.,1996)、文化ブロックとは異なり、LRFはEUのような政府主導の地域統合と関連することから、地域本社とも関係すると考えている。
そして、改良ポイント候補の事業経験の内容にかかわる両利きIBの考察である(③)。当初販売や生産などを想定していたが、両利きIB概念の登場により既存の能力を活用する活用型FDIと新しい能力を獲得する探索型FDIという分類も可能である(Hsu et al.,2012; Deng et al.,2018)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究プロジェクトも新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受けた。キャンパスへの入構禁止や外出自粛によって、2~3月に計画していたデータベースの構築作業や研究会での発表を延期した。
ソーシャルにせよフィジカルにせよ「ディスタンス」を確保することが提唱されるようになったことにより、距離に注目が集まるようになった。距離は外国企業扱いを受けることや外国企業であることによって被る不利益=LOFの源泉とされてきたが(Zaheer, 1996)、LOF研究は増え続け、なかには外国企業であること潜在的なベネフィットを強調する議論も登場してきた(AOF)。LOFの存在を否定しないが、プラスとマイナスのインプリケーションを持つことを示唆している(advantages of foreignness Edman , 2016; asset of foreignness Taussig, 2017)。われわれも、AOFの存在を否定しないし、国レベルではなく企業・組織レベルの概念であることは共通するが、あくまで立地選択の先行変数としてのLOF、新型のダイナミックLOFに注目している。
それゆえ、改めて新型ダイナミックLOFの改良に貢献する先行研究のレビューに取り組んだ。その成果が上述した①~③である。とりわけ①は本研究課題にとって重要な先行研究に加え、WADとADを中心としたレビュー論文を執筆しているところである。
③は『日本企業のグローバル成長の戦略とマネジメント(仮題)』のなかに「国際ビジネスにおける両利き概念の再検討~多国籍企業のジレンマとバランス~」として検討内容の一部が所収される予定であったが2019年度中の出版が実現しなかった。2020年度中の出版を目指している。

今後の研究の推進方策

IB研究の代表的なジャーナルであるJournal of International Business Studiesの2019年の10年賞(Decade Award)の受賞論文はJohanson & Vahlne (2009) であった。彼らはLOFそのものではなく、よそ者であることによって被るコストが重要であると主張している。国際化した企業は新しい現地のコンテクストにおいてビジネスネットワークの一部ではないことに問題があるのだと。彼らの研究が発表されてからも、LOF研究は増え続けており、本研究プロジェクトもその1つであることを自覚し、LOF研究にとって節目となる2019年は研究を前進させなければならなかった。大きな前進とは言えないものの、見落としていた「追加された距離」の発見、地域の視点、両利きIBの検討という成果を今後に活かしていきたい。
本年度はまず最初にできるだけ速やかに、重要な先行研究に加えた「追加された距離(AD)」(Hutzschenreuter&Voll,2008)をめぐる議論を時間加重距離(WAD)(Zhou&Guillen,2014)と比較・整理するレビュー論文をまとめて投稿する(①)。そして、改良ポイント候補の1つである事業経験の内容にかかわる両利きIBについては「国際ビジネスにおける両利き概念の再検討~多国籍企業のジレンマとバランス~」として本年度中に出版する(出版される本に所収)(③)。
それらと並行して、データベースを構築し、実証研究を行い、研究会での発表まで進めていく。本研究課題の目的は、新しいダイナミックLOFについて検討することに止まらず、改良版新型ダイナミックLOFを用いて日系自動車部品メーカーの立地選択について実証研究を行うことである。シーケンシャルではなくコンカレントでプロジェクトを進めていく。

次年度使用額が生じた理由

データベースの構築作業の遅れが最大の原因である。新型ダイナミックLOFの改良ポイントについて検討していく作業(先行研究のレビュー)は論文を中心に行ったため、支出を必要としなかった。データの購入も考えたが、次年度になれば新しいデータも発売され選択肢も増えるため、本年度(2019度)急いで購入することは止めることにした。そして、この未使用分を研究プロジェクトの遅れを取り戻すために、また遅れを取り戻してから必要となるデータベース構築作業と学会発表のための旅費、そして論文の校正のために次年度(2020年度)に使用させていただくことにした。データの収集と整理には多くの時間と労力が必要なので補助が欠かせない。作業補助者には購入するデータと各社ホームージ情報や日経テレコンと照らし合わせる確認作業および入力作業をお願いする。幸いなことに代表者の勤務先ではキャンパスの入構制限が段階的に解除され始めた。夏休みごろには作業を再開できるよう準備しておきたい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 図書 (1件)

  • [図書] テキスト現代経営入門(第2版)2020

    • 著者名/発表者名
      桑名義晴・宮下幸一編著(齋藤の担当は第6章)
    • 総ページ数
      272ページ(うち担当は105-125ページ)
    • 出版者
      中央経済社
    • ISBN
      978-4-502-33711-6

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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