研究課題
基盤研究(C)
この研究では、トップマネジメントの分業体制である管掌構造など、経営陣の特徴が企業内における資源配分メカニズムである内部資本市場の働きに及ぼす影響を公開データに基づき、実証的に分析した。複数の事業セグメントを持つ日本の多角化企業をサンプルとする分析では、トップはじめとする役員の数や年齢、管掌構造といった経営陣の特性と事業間の資金配分の効率性の間に体系的な関係は見出されなかった。一方で、社齢や組織構造など企業組織の全体としての特徴は、内部資本市場の働きに強い影響を及ぼすことが見いだされた。
経営戦略と企業財務
海外の研究では、経営陣の特性が企業の行動や業績に及ぼす影響が様々な角度から分析されてきた。日本の多角化企業に関する本研究の結果は、事業間の資金配分に関する限り、組織ヒエラルキーの頂点に位置する経営陣の影響は小さいことを示している。一方で、企業組織全体の強い影響が観察されたことは、日本企業においては「トップ」である経営陣もまた、企業組織全体の歴史や成り立ちに意思決定が強く制約されることを示している。この発見は、日本企業のマネジメントの特徴と課題について、重要な示唆を与えるものである。