研究課題/領域番号 |
18K01856
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
高橋 正泰 明治大学, 経営学部, 専任教授 (10154866)
|
研究分担者 |
高木 俊雄 昭和女子大学, グローバルビジネス学部, 准教授 (80409482)
四本 雅人 長崎県立大学, 経営学部, 准教授 (90547796)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ブラック企業 / CMS / ディスコース分析 / 家の論理 |
研究実績の概要 |
今日、日本において大きな社会問題となっているのが「ブラック企業」である。ブラック企業とは、新卒正社員を大量に採用するも、その社員たちを入社後に過当な選別競争にさらし、そのために異常な長時間労働と残業代の未払いを当然のこととして受け入れさせ、競争からあぶれた社員を自発的な退職へと追い込むような戦略的パワーハラスメントが行われている企業のことを指す(今野, 2012)。我々は、この現象に対し定性型調査と定量的調査を用いて、(1)CMSやディスコース分析の知見を用いてブラック企業の日本企業の伝統的な「家」の戦略的利用について検討、(2)ブラック企業を乗り越え、様々なステークホルダーの利害を包摂した新たな経営理念に基づく企業のあり方について研究を行うことを目的としてしている。 そのうえで2018年度は、「CMSおよびディスコース分析についての理論的・方法論的研究」について検討することとし、研究を重ねてきた。この理由として、本研究プロジェクトではブラック企業という現象を単に現状を記述するのではなく、なぜこのような現象が生じたのかを明らかにすることが必要であると考え、そのためには現状記述型ではなく、CMSやディスコース分析に代表されるような、「なぜこの現象が生じたのか、その理由は何か」を明らかにする分析方法が必要と考えたためである。また、我々は資料調査のみならず、元従業員やマネジャー等にもインタビューを行い、彼らの中でどのように「家」や「家族」といった表象が構築され、それに基づく行為が生じていったのかについてディスコース分析により記述した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は上述の課題について、学術論文2本、学会発表1回を行っている。またインタビューも予定通り行っており、研究が順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、「なぜ、このようなブラック企業問題が現在の日本において現れたのか」についてを中心に研究を展開し、バブル経済が弾けるとともにグローバリズムの波に飲み込まれ、崩壊したと言われている日本的経営の1つの変容した姿を浮き彫りにする。すなわち、短期的な成果のみを追求し、安易に従業員を切り捨てることを可能とするようなマネジメント思想が「家の論理」と歪な形で結合することによって、従業員には滅私奉公を強いる一方で、企業は温情と庇護を与えることなく肉体的にも精神的にも追い込み、言わば、人間性を抑圧することによって、従業員が使い捨てにされてしまっているのである。そのため、第2の研究として、日本的雇用慣行がどのように変化したのかを振り返るとともに、そこからブラック企業の問題がいかに発生したのかについて四本が中心となり明らかにする。そのため、アメリカの研究者が中心となって行われた日本的経営の研究 (e.g., Pascale & Athos, 1981; Ouchi, 1981; Jacoby, 2004)や、日本的経営の背景にある原理・原則を明らかにする間(1989)、津田(1981)等の研究をベースにしつつ、それ以降の変遷を研究論文、経団連等の資料、各種労働組合資料から示す。そして、すべての利害関係者の繁栄をもたらすコミュニティ企業の姿を模索し、該当企業の予備調査を実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
できる限り早く航空券等を予約するよう研究代表者および研究分担者で心掛けたことにより、当初予定よりも安価な航空券が購入できたため次年度使用額が生じることとなった。
|