研究課題
本研究は、人材の多様性をいかすことで価値創造につなげるプロセスを明らかにすることを目的としている。2020年度は、1)定性分析、2)定量分析、3)諸外国の研究者との意見交換、4)研究成果発表を行った。1)については、引き続き、日本に本社を置くグローバルカンパニーの、欧州のトップマネジメントチームのメンバー、本国親会社および地域の統括部門に対するヒアリング調査を行った。その結果、環境変化に応じて、登用するメンバーを変容させ、各メンバーがいかにを貢献意識を持ち、それがチームの成果および、域内の成果につながるかを明らかにした。2)については、トップマネジメントチームの、各メンバーがもたらす価値、価値観の距離、パワー格差を指標化し、チームの成果、域内の成果に影響を与えるかを経年で分析した。3)については、2019年8月に米国ボストンで開催されたアカデミー・オブ・マネジメントの年次大会において、研究発表を行った際に多様性をいかす風土について、各国研究者との意見交換を行った。また、12月に京都で開催された欧州組織学会において、研究発表を行った際に、各国組織論研究者と議論した。4)については、定性分析の結果を、12月欧州組織学会(京都)にて研究発表を行った。さらに、定性分析と定量分析の統合結果を、1月にアカデミー・オブ・マネジメント年次大会に論文を投稿したところ、International Management Divisionにおいてベストペーパーに選定された。その結果は、8月にProceedingに掲載予定である。そのほかの成果発表としては、①世界各国で用いられるジェンダーインデックスに関する批判と今後についての論文を執筆した(2021年8月出版予定)。②各国のワークライフバランス制度がいかに個人のキャリア形成においてジェンダー格差を生むかについての論文を投稿した。
2: おおむね順調に進展している
多国籍企業の欧州地域におけるトップマネジメントチームの多様性とビジネスモデルの変革プロセスとの関係性についての調査結果が、2020年アカデミー・オブ・マネジメント(Academy of Management)の年次大会(80th Annual Meeting)、International Management Divisionにおいてベストペーパーに選ばれた。レビューコメントにおいても、学術的、実践的に価値のある研究だとの概ね肯定的な評価を得た。今後も引き続き、トップマネジメントチームのメンバー、本国親会社および地域の統括部門へのヒアリング調査を行っていく。そのほかの成果発表としては、①世界各国で用いられるジェンダーインデックスそのものに関する批判と今後の課題についての論文を執筆した(2021年8月出版予定)。②各国のワークライフバランス制度がいかに個人のキャリア形成においてジェンダー格差を生むかについての論文をメジャージャーナル投稿し、現在、第2回目のレビュー段階にある。
計画の変更を要するのは、定量分析における財務成果の測定についてである。従業員アンケート調査の協力をいただいた企業(The 80th Annual Meeting of Academy of Managementのベストペーパーに選定された論文の調査対象企業とは異なる調査対象先)から、客観指標となる財務成果のデータが、引き続き入手困難との回答を得ている。そこで、今後は、分析フレームワークを再考しつつ、その他の組織変数を用いて、分析を続ける。また、ベストペーパーに選定された調査については、引き続き欧州トップマネジメントチームのメンバー、本国親会社の取締役、グローバルおよび地域の統括部門へのヒアリング調査を実施し、次の問いを探求する。1)変革の各段階において顕著になる多様性、2)トップマネジメントチームのメンバーの貢献意識とパフォーマンスの関係、3)チームや組織レベルのパフォーマンスと変革の段階との関係。加えて、本研究については、AIB(アカデミーオブインターナショナルビジネス)のJournal of International Business Studiesペーパーデベロップメントワークショップ(6月30日)において、2人の研究者からアドバイスを得ながら修正する。また8月のアカデミーオブマネジメント年次大会での発表においても、参加者からのコメント意見交換をもとに、論文を修正し、プレミアジャーナルへの投稿をめざす。
コロナ禍の影響で、ヒアリング調査のスケジュールが後ろ倒しになり、テープ起こしの費用を次年度に計上するため。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
The 80th Annual Meeting of Academy of Management Best Paper Proceedings
巻: 2020 ページ: forthcomming
看護部長通信
巻: 17(2) ページ: 11-15
日本教育
巻: 10月合併号 ページ: 8-11
Human Resource Management Journal
巻: forthcoming ページ: 1-27
10.1111/1748-8583.12247