研究課題/領域番号 |
18K01857
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
谷口 真美 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (80289256)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ダイバーシティ / インクルージョン / 人的資本経営 / 価値創造 / 多様性風土 / 貢献意識 / 多様性 / 成果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、企業組織が人材の多様性をいかすことで価値創造につなげるプロセスを明らかにすることである。日本企業は現在、多様性を含む人的資本情報の開示に取り組んでいる。谷口が検討委員として関わった「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート 2.0 ~」(経済産業省)は、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値創造につなげる経営を提案した。その価値創造ストーリーの文脈で、ダイバーシティ&インクルージョンを共通要素の1つとしている。これ以前から同省の「ダイバーシティ経営の実践推進事業」の運営委員として関わるなかで、企業を取り巻く環境変化とそれへの対処が大きく変化している点に着目し、令和4(2022)年度は、1)研究発表および諸外国の研究者との意見交換、2)企業へのヒアリング調査、3)文献レビュー、4)研究成果の統合の4つを行った。 1)アカデミー・オブ・マネジメント2022年次大会に(8月米国シアトル)に参加し、意見交換を行った。3年ぶりの対面での学会であったため、研究者間の心理的安全が高まり、本音での議論ができた。米国における多様性風土(特にインクルージョン)研究が、変革を必要とする時期に達したことを実感した。 2)企業のトップおよびミドル層に聞き取りを行い。各社各様にダイバーシティ&インクルージョンを捉え、取り組んでいることを確認した。ダイバーシティの捉え方については、日本労働研究雑誌に論説を刊行した。 3)国内外のダイバーシティと成果に関する研究をレビューした。ダイバーシティが成果におよぼす理論的研究が、停滞している現状と、その理由、今後求められていることの大勢を確認した。 4)2023年度中の書籍発行に向けて、出版社と調整を行った。1)と2)をもとに書籍の2章から5章の草稿を大幅に加筆修正する必要を実感し、修正を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、国際学会がすべてオンラインでの開催となった2021年度までと異なり、2022年8月には対面で海外研究者との意見交換を行うことができた。また企業へのヒアリング調査も対面で行った。人的資本経営の企業の取り組みの短期間での進化とインクルージョン研究の変革期の実感が、研究成果統合にとってポジティブに作用した。文献サーベイや、論文執筆、書籍草稿執筆に時間をかけることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、ヒアリング調査を完了させたうえで、個別分析とそれらの統合を行い、関連研究者との意見交換を通じて研究を完成させる。 1)各国のコロナ対策規制状況に応じて、オンラインでの追加ヒアリング調査を実施。 2)分析結果を統合。既に出版許可が下りている日本語での書籍に関して、実証研究結果部分の執筆を行い。2023年度中の出版を確実にする。また、英文ジャーナルに関しては、ハイインパクトジャーナルへの投稿を行うべく、草稿の修正を行う。 3)統合した分析結果に基づき、海外研究者と意見交換。「アカデミー・オブ・マネジメント2023」年次大会(アメリカ、ボストンにて開催)にて8月に研究発表を行う際に、各国、各分野の研究者との意見交換を実施する。 4)共同研究者との意見交換を対面で実施。事前準備を十分に行うとともに、開催頻度を増やす。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2023年1月の有価証券報告書への非財務情報開示義務化に際して「人的資本経営」に対する関心が急速に強まっている。ダイバーシティ&インクルージョンが、その概念の構成要素の一つと位置づけられ、改めて「経営戦略との連動」という視点で捉えられている。そうした中、多様性をいかす組織風土への変革が急務となる企業も増加した。 この動向を踏まえて、成果公開においてもより一層、実践に即した解説を加えることが必要だと考え延伸した。分析結果の統合を、現行の企業の取り組み合致した形ですすめ、著書の草稿(2章から5章)を加筆修正し、トップジャーナルへの投稿とともに成果公表を進める。
|