研究実績の概要 |
本研究の目的は、多国籍企業の知的財産マネジメントの特徴を考察し、多国籍企業がグローバル・シチズンとしての納税責任を果たすことがその企業価値の向上に結びつくことを解明していくことである。2018年度は、おおむね実施計画どおりに、日本企業の知的財産マネジメントの学術的な理論の研究とその実践について調査するとともに、BEPSプロジェクトについての文献収集を行った。学内において研究会を開催するとともに、その成果の一部を国際学会において報告した。 理論的な側面では、Caf Dowlahの著作などに依拠して、多国籍企業が実物財の国際的な移動管理で国際的な税コントロールを行うことから、近年の無形固定資産の国際的なコンフィギュレーションによって国際的な実効税率を抑えようとする管理に移行してきた過程を吟味した。 他方、研究成果の発表については、国際学会(2018年7月5日:大阪)において、日本企業において純粋持株会社を有する企業グループの純粋親会社の事業子会社コントロールの関与の程度とその決定要因についての研究論文の発表を行った。この研究内容は、論文として学会誌(Review of Integrative Business & Economics, vol.8 (3), 2019, pp.43-53)に掲載された。 また、同年9月のドイツ・ミュンヘンの国際研究会において、日本企業ののれん(知的財産)の減損損失のリスク管理についての理論および事例研究についての研究論文発表を行った。この研究ではトービンのqが、国際的な買収において発生する巨額なのれんから派生するリスクの大きさを測る尺度のひとつとなりうることを示したうえで、その仮説をいくつかのケースで検証することを試みた。
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