研究課題/領域番号 |
18K01864
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
上野 恭裕 関西大学, 社会学部, 教授 (30244669)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ファミリービジネス / ファミリー性 / 社会情緒的資産 / 長期存続 / 伝統産業 |
研究実績の概要 |
令和元年度から引き続き文献研究と事例研究を中心に行った。これまでの先行研究の分析により、ファミリー性と共に社会情緒的資産の概念に注目し事例分析を進めてきた。社会情緒的資産とはファミリービジネスを所有する創業者一族が、利益ではなく事業を通じて得られる非財務的な価値の追求を優先するという考え方であり、そのような資産を保有することにより、非ファミリービジネスの企業に対して競争上の優位性を持つとする議論である。 今年度は上記の理論的な前提を踏まえ、事例研究を進めてきた。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、事例研究の対象が限られる中、日本企業を中心に事例研究を行った。具体的には刃物産業や線香産業などの伝統産業におけるファミリービジネスの経営者にインタビューを行うことにより、長期存続の要因についての分析を進めた。分析対象となった企業の多くが自社の利益よりも業界の存続や伝統技術の継承、地域社会への貢献を第一に考えており、長期存続の要因として社会情緒的資産を保有していることが明らかとなった。 これらの発見事実についての国際比較研究がこの研究のテーマの一つであるが、昨年度同様に今年度も新型コロナウイルスの感染拡大の為、海外渡航が制限されており、可能な範囲でオンラインによる事例研究を行った。日本との比較のためにイギリス・シェフィールドの刃物メーカーを対象として分析を行った。その結果、日本と同様に伝統技術の継承など利益以外の非財務的な価値を追求している企業は長期存続を果たしていた。一方、大量生産を伴う規模の拡大による成長を志向した企業は競争に敗れ、倒産や他企業による買収という結果を招いていた。海外企業においても社会情緒的資産の仮説は支持されたといえる。これについての事例論文は発表したが、非ファミリービジネスとの競争優位性の比較という観点からの厳密な比較研究は今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り、文献の収集、資料の収集は順調に行われているが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で海外の企業に対する現地でのインタビュー調査が延期されており、その点では若干の遅れが生じている。ただしオンラインを利用した調査を進めるなどの工夫でそれを補っている。また、学会も多くが中止になり、発表の機会も失われており、研究者との議論も十分に行えていない。これについてもオンラインでの議論などの工夫による改善を図っているが、現地での対面による情報収集に比べると得られる情報量に限界があり、若干の研究の遅れとなっている。 次年度において新型コロナウイルスの感染が収束し、海外の現地企業へのインタビュー調査を再開できるようになれば、これまでの研究の遅れを取り戻す予定である。また、学会もオンラインにより再開されているケースもあり、学会発表と研究者との議論を積極的に行い、理論の精緻化を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は収集した文献を読み込み、問題の更なる明確化を行う予定である。同時に事例研究によって得られた発見事実をもとに理論の批判的検討を行い、理論の再構築、新たな概念の提唱を目指して分析を進めていく。 また、海外渡航の制限が緩和された場合には、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により実施できなかった海外企業の現地インタビュー調査を可能な限り実施し、より豊富なデータや情報の収集に努める。さらにこれまで構築してきたデータベースをもとに質問票調査を実施し、仮説の厳密な検証を行う予定である。 これらによって得られた研究成果を論文として投稿すると同時に、これまで中止や延期となっていた国際学会の状況を注視しながら、研究成果を発信のための学会参加、学会での研究発表を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度計画していた海外のファミリービジネス企業の経営者への現地インタビュー調査が海外渡航制限により実施できず、海外旅費に大幅な未使用額が生じた。また国内企業へのインタビュー調査も感染状況の悪化により中止となる場合が多く、次年度に繰り越しとなっている。ただしインタビュー予定の研究対象企業とは連絡を取り合っており、次年度に状況が改善された場合には、現地におけるインタビュー調査を実施する予定である。そのために旅費として多くを計上している。またインタビュー調査が可能となれば仮説検証を進めることが可能となり、計画し準備を進めている質問票調査にも取り組んでいく予定である。そのための郵送調査に研究費を使用する予定である。また研究結果を学会等で公表するための旅費としても、研究費を使用する計画である。
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