研究課題/領域番号 |
18K01866
|
研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
宇山 通 九州産業大学, 商学部, 准教授 (50584041)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 部品共通化 / プラットフォーム / 工程 / 柔軟性 |
研究実績の概要 |
交付申請書における研究課題は,部品標準化戦略と生産システムとの相互作用に関する企業間比較研究であった。本年度はトヨタ自動車㈱(以下,トヨタと略記)を対象に,上記相互作用について考察した。以下にその概要を述べる。 トヨタの車体組立工程の柔軟化とプラットフォーム(以下,PFと略記)共通化との関係について通時的に分析した。同社は車体組立工程の専用度を段階的に下げていった。これにより,品質(溶接の正確さ),コスト(溶接機稼働率,治具使用率,溶接機・治具の設計・製造コスト),リードタイム(溶接機・治具の設計・製造リードタイム),これら3つの競争パフォーマンスの混流,投入モデル変更に対する柔軟性が向上していった。 この工程の柔軟性向上は次の2つの点でPF共通化を促進させたと考えられた。混流を進め,投入モデルを変更しても上記パフォーマンスが低下しにくいことから,当該PFへのバリエーション付与が可能となった(1点目)。また上記パフォーマンス低下が防止できた点で車体組立工程の改良余地は小さく,相対的に共通PF開発の改良余地が大きくなったことから,PF共通化の進展に取り組む動機が高まった(2点目)。 この結論から次のインプリケーションを示した。1990年代後半トヨタをはじめとする日本自動車企業は,過度な多様化への反省から広範囲に亘る部品共通化戦略を策定し,実行した。それはバブル崩壊後の同企業の競争力要因と評価された。しかしその戦略策定に向かう動機は,工程の柔軟性に関する改良余地が小さく(部品共通化の改良余地が相対的に大きく)なった後でなければ十分に高まらなかっただろうし,高い柔軟性をもつ(寸法差のあるPFに対応可能な)工程なしには,その戦略は奏功しなかったであろう。つまり工程に高い柔軟性が構築されていたからこそ,高度な部品共通化へ向かう戦略が採用,実現されたのではないか,という含意である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書において1年間で明らかにすべき事項を論文としてまとめることができた。ただし同申請書では上記【研究実績の概要】欄記載の研究の前に,1ラインあたり生産車種の統一性について論文としてまとめる予定であった。こちらに関しても研究は進めているが,論文にまとめあげる段階には至っていないため,区分(1)とまではいえず,区分(2)とした。
|
今後の研究の推進方策 |
まず上記【現在までの進捗状況】の通り,1ラインあたり生産車種の統一性について研究を進め,論文としてまとめることである。その考察の上で,トヨタとは異なる部品標準化戦略を採用している企業の同戦略と生産システムとの関係を考察することである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
【当該助成金が生じた状況】主に学年暦の関係から当初参加を予定していた学会へ行くことができなかったこと,また体調不良により当初参加を予定していた研究会へ行くことができなかったことによる。 【翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画】参加予定の学会が2019年度は国内ではなく海外(台湾)で開催されるため,B-A分をそこに充てたい。
|