研究課題/領域番号 |
18K01866
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
宇山 通 九州産業大学, 商学部, 准教授 (50584041)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 部品共通化 / 製品多様化 / 製品開発 / 自動車産業 |
研究実績の概要 |
多様で変化する市場へ適合し,同時にその適合に伴うコストアップを抑制することは,現代製造企業の1主要課題である。この課題達成には,多様化したり切り替えたりしても,消費者が認識しにくい要素について,製品間で共通化することが有効である。 それゆえ上記共通化について難点やその解消に向けたアプローチが研究されてきた。本科研費における研究の主要課題の一つは,このアプローチに関する企業の差を解明することであった。 通常共通化の対象としては,部品の構造(同一寸法,同一形体)が想定されていた。しかし2000年代後半からマツダ等一部自動車企業は,部品の機能の共通化を展開した。たとえばエンジンでは,構成部品の寸法,形体が等しい同一排気量エンジンではなく,排気量が異なってもトルク等燃焼特性の等しいエンジンを複数モデルに搭載している。 そこで2019年度科研費研究では,機能共通化に関して方法,効果,背景を考察した。機能共通化はスケールメリットではなく,開発,製造面の経営資源ムダ排除を志向するものであった。この機能共通化は多様で変化する市場への適合とそれに伴うコストアップ抑制の高度化という2000年代中頃からの自動車業界の趨勢に沿うものであった。 ただしこの機能共通化選択の背景には,マツダのフォード傘下時代における自社とフォードとの違い,それぞれの特性に関する認識の発展があった。それは一定の企業規模を前提に量を重視したフォードの共通化アプローチが,多様なモデルを少量でも出来るだけ無駄なく生産する小規模な自社のアプローチとは相容れないという認識であった。この認識の発展があったからこそ,スケールメリット志向であるモジュール単位での構造共通化とは一線を画した機能共通化が,マツダにおいて構築されたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
部品共通化と生産システムとの関係について,企業による差を浮き彫りにすることが,本科研費研究の主たる目的である。研究開始前の段階では,トヨタとVWグループとに上記の差が強くみられると想定していた。 しかし実際に研究を進める中で,上欄【研究実績の概要】の通り,マツダがユニークな部品共通化を展開していることを発見した。そこで2019年度の研究ではその部品共通化(の方法,効果,背景)について考察した。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の研究より,工程柔軟化が進むほど,PFの高度標準化(=同じ開発成果の適用拡大)を進める動機が強くなり,同標準化を促進しやすくなることを明らかにした。また2019年度の研究より,多品種少量生産になるほど,PFの高度標準化の動機が強くなることを明らかにした。 したがって工程柔軟性を一定水準確保しており,多品種少量生産を強いられるほど(以下,要因x),自動車企業はPFを高度標準化する(以下,結果y)というのが,この2年間の研究の結論である。しかし要因xが存在するにもかかわらず,結果yが生じなかったケースは存在する(たとえば1980年代におけるマツダ)。 そこで当該時期,当該自動車企業において,xが存在するにもかかわらず,なぜyが生じなかったのかについて考察することで,PF高度標準化を抑制させる要因(ひいては促進させるx以外の要因)について明らかにすることが,本研究課題の今後の推進方策である。
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次年度使用額が生じた理由 |
この理由は,主として海外企業から国内企業へと考察対象企業を変更したことによる旅費の圧縮である。 使用計画としては,各モデル開発ストーリーに関する資料を購入,複写し,渉猟することで,前述の「X以外の要因」を明らかにすることである。
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