【最終年度に実施した研究の成果】研究期間全体として自動車企業による部品標準化戦略の転換を取り上げたが,2020年度は同戦略が2000年代後半から2010年代末にかけていかに転換したのかを明らかにした。その変容とは設計プロセスの初期段階で,個々のモデルに共通する設計を前倒しで済ませるようになった,というものであった。この結論を受け,2021年度は個々のモデルに共通する設計を,なぜ前倒しするようになったのかを考察した。 結論は次の通りである。本研究で取り上げた自動車企業3社では,変容直前の2000年代中頃,設計方向(製品多様化/部品共通化)に偏りが生じており,その偏りが市場適合またはコスト抑制上の問題を発生させた。この設計方向の偏りによって(他にも要因はあるものの),上記のモデル群共通部前倒し設計にコスト抑制・市場適合上の問題解決策としての妥当性が付与された。ただし設計方向の偏りが自動車企業に認識されるには,その問題を顕在化させる条件(たとえば世界金融危機によるコスト抑制不足の顕在化)が,企業ごとに別途必要であった。よって2000年代中頃に設計方向(製品多様化/部品共通化)に偏りが発生し,それが世界金融危機等で顕在化し,問題解決策としてモデル群共通部前倒し設計が妥当性を有したがゆえに,この設計へ転換するに至ったと考えられる。 【研究期間全体を通じて実施した研究の成果】上述の通り,本研究では自動車企業3社の部品標準化戦略の構造と同戦略の登場に至るプロセス,両者に共通する特徴を導出している。無論これには3社それぞれの個別分析が必要である。3社のうちマツダに関して本研究期間前に解明してなかったため,同社の部品標準化戦略の構造とそこに至るまでのプロセスについて,2019年度の研究で明らかにしている。これにより3社に共通する特徴の分析が可能となり,2021年度の最終成果に至った。
|