研究課題/領域番号 |
18K01867
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
藤岡 豊 西南学院大学, 商学部, 教授 (30320253)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多国籍企業 / 生産技術システム / 水平移転 / 形式化 / 概念的技能 / 教えることの効果 |
研究実績の概要 |
筆者は令和元(2019)年度において研究課題「多国籍企業における生産技術の水平移転の研究」に関する質問票調査と統計分析を行い,その分析結果を補完するために複数企業の事例研究を行った。そして,これらの分析結果を総合して博士論文と資料を作成した。 まず,筆者は筆者を含めて4人の研究者で「多国籍企業における生産技術システムの国際移転に関する研究プロジェクト」を組織し,日系多国籍製造企業の海外製造子会社3,025社に対して質問票を郵送した。質問票は日本語と英語で作成し,令和元(2019)年11月中旬まで回答を収集した。その結果,最終的に391社から有効回答を得ることができ,有効発送数2,911に対する有効回答率は13.4%(=391÷2,911)となった。 次に,筆者はその回答の統計分析を行った。筆者は先行研究の分析から「生産技術システムを供給する(教える)側の技術者と作業者は,生産技術システムの国際的な水平移転を通じて概念的技能を開発する」という仮説を立て,多変量解析を行ってその妥当性を検証した。その結果,生産技術システムを供給する(教える)側の技術者と作業者は,まず自社の生産技術システムを形式化し,次にその形式化の作業を通じて自らの概念的技能を開発することを断片的に突き止めた。 筆者はさらにその「生産技術システムの国際水平移転→生産技術システムの形式化→供給する(教える)側の概念的技能の開発」という因果関係を検証するために,日系多国籍企業の2社の事例分析を行った。その結果,いずれの事例においても,その因果関係が機能していることを確認することができた。 筆者はこれらの分析結果を博士論文にまとめて神戸大学に提出し,令和2(2020)年3月25日に博士(経営学)の学位を授与された。また,博士論文の記述統計については,学内の紀要を通じて資料として公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30(2018)年度に国内外の研究調査対象企業へのインタビュー調査を実施できたことから,令和元(2019)年度では質問票調査と統計分析の実施,事例研究の実施,研究論文の執筆に専念することができた。 研究論文は博士論文にまとめて神戸大学に提出し,令和2(2020)年3月25日に博士(経営学)の学位を授与された。また,博士論文の記述統計に関する部分を『西南学院大学商学論集』(第66巻第4号,2020年3月10日発行,177-188頁)において資料(「多国籍企業における生産技術システムの国際移転に関する研究プロジェクト」)として公刊した。
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今後の研究の推進方策 |
令和元(2019)年度では研究成果を博士論文としてまとめることができた。令和2(2020)年度ではその博士論文の内容を複数の査読付き学術雑誌へ投稿するとともに,複数の関連学会において報告しようと考えている。その査読付き学術雑誌への投稿と関連学会での報告を終えた後は,学術雑誌の査読結果と学会報告でのコメントに基づいて博士論文の内容を修正し,著書として公刊したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
筆者は当初の予定よりも大規模な質問票調査を実施するために,令和元(2019)年度において令和2(2020)年度と令和3(2021)年度の研究費を前倒しして,令和元(2019)年度の研究費と併せて使用した。ほぼ研究予算と同等の研究費を使って大規模質問票調査を実施することができたが,残念ながら24,523円だけ残額が生じてしまった。令和2(2020)年度においては,研究費のその残額を主に研究成果の発表に関する費用にあてて,有意義に使用しようと考えている。
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