2021年度に大規模なアンケート調査を実施して、2019年度までに得られた結果の検証を行う予定であったが、突然のコロナ禍によって、十分な研究の推進ができ なった。そこで、過年度に実施した先行研究のデータを改めて再分析を行い、2019年度の研究成果から得られたインプリケーションを整理し、本研究における仮説の探索的な検証を行った。具体的には、前田(2018)が行った医療・保健・福祉の分野で雇用される専門職非正社員の個票データ370名分の 中から、過去1年 以内に企業側から提供されたOFF-JTを受講した93名のデータを分析の対象とした。分析の結果、医療・保健・福祉分野における専門職非正社員においては、企業側から提供される学習機会の有効性が職務意欲を高めることで職場継続の意思を形成させる間接効果があることが明らかになった。なお、媒介効果の検定方法は、ソベルテストを行って実施した。 そこで2022年度は、2021年度までの研究成果を基に仮説の再設定を行った。そして、医療・保健・福祉分野で雇用される専門職非正社員を対象にインターネットを利用したアンケート調査を行った。調査に協力が得られた241名の中から、過去2年間に企業側から提供されたOFF-JTを受講した105名を分析の対象とした。調査期間は、2022年4月22日から26日までであった。 その結果、本研究の仮説が支持され、医療・保健・福祉分野における専門職非正社員においては、効果的な学習機会を提供することで、ワーク・エンゲイジメントが高まり、それによってパーソナル・イニシアティブ行動が活発となり、リテンションを促進する効果があるという結果を得ることができた。
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