研究課題/領域番号 |
18K01871
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
西尾 チヅル 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (80241769)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 消費者行動 / ソーシャルマーケティング / エシカル志向 / 食品ロス行動 |
研究実績の概要 |
本研究は日本の消費者のエシカル志向と行動に焦点をあて、その背後にある価値構造と行動促進のメカニズムを解明し、国際的にその推進が求められている社会の持続可能性を高めるライフスタイルとして定着させるための方法を提示することを目的としている。具体的には、課題1:消費者のエシカル問題の認知の多様性とその特徴、課題2:消費者のエシカル志向の特徴と構成要素の特定化、課題3:企業のエシカル支援やエシカルプロダクト選択の規定要因の解明の3つの課題について取り組む。 本年度は、昨年度に引き続き課題2の消費者のエシカル志向の特徴とその変遷に関する研究を行った。その結果、著者らが開発したサステナブル価値尺度が仮定している6つの下位志向は尺度の等価性や弁別妥当性等を充足していることを確認した。なお、成果はマーケティング・サイエンス学会の研究部会や108回大会で報告した。 また、課題3に関する研究として、食品スーパーが食品ロスを削減するために実施している値引き販売やタイムセール等の取り組みが、消費者の食品ロス行動に及ぼす影響を分析した。その結果、これらの企業側の施策により引き起こされる非計画購買は、料理関与やエシカル関与が低い場合には食品ロス行動を高めること等の知見が得らえた。その結果は商業学会で報告すると共に、査読付き学術雑誌に投稿準備中である。 一方で、精緻化したエシカル尺度を用いて課題3に関する大規模消費者調査を実施する予定であった。しかし、COVID-19蔓延による外出規制、在宅勤務、飲食業・商業施設の休業等、生活環境が急変した。このような期間に大規模消費者調査を行っても、コロナ禍という特殊環境下でのデータ収集となり、仮定したような消費者行動の計測は困難である。そこで大規模消費者調査の実施を延期した。それに伴い、本研究(補助事業)期間の延長申請を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、精緻化したエシカル尺度を用いて課題3に関する大規模消費者調査を実施する予定であった。しかし、COVID-19蔓延による外出規制、在宅勤務、飲食業・商業施設の休業等、消費者を取り巻く生活環境が急変した。このような体験は初めてのことであり、平常状態でない時期に大規模消費者調査を行っても、コロナ禍という特殊環境下でのデータ収集となり、仮定したような消費者行動の計測は困難である。そこでコロナ禍が収まるまで大規模消費者調査の実施を待っていたが、結局、年度内にその状況が全く改善されなかった。そのため、大規模消費者調査の実施を延期すべきと判断した。また、それに伴い、本研究(補助事業)期間を1年延長する申請を行った(その結果、1年間の申請延長が承認された)。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度になってもコロナ禍は続いている。しかし、1年以上の経験により、消費者は「with コロナ」という新しいライフスタイルを構築しつつある。そこで、この点を考慮した上で、延期した大規模消費者調査を早期に実施する予定である。その際、消費者のエシカル志向や行動が本研究が仮定したサステナブル価値によるものなのか、コロナ禍の経験によるものなのか等について、的確に捕捉できるようなモデル化が不可欠である。そこで、その点を捕捉するための理論武装とモデル構築をスタートした。それらの知見を用いて仮説モデルの改善を行い、大規模消費者調査データに基づく検証を実施する。その上で、これまでの成果も踏まえて、本研究の成果をとりまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
既述のように、本年度は、精緻化したエシカル尺度を用いて課題3に関する大規模消費者調査を実施する予定であった。しかし、COVID-19蔓延による外出規制、在宅勤務、飲食業・商業施設の休業等、消費者を取り巻く生活環境の急変は、研究データの収集に多大なる影響を及ぼすことから、大規模消費者調査の実施を延期した。次年度使用額は、コロナ禍がもたらす変化についても加味した仮説モデル構築に必要な文献調査費、延期した大規模消費者調査の調査委託費、および、研究資料の作成と分析の補助業務を行う人件費に充当する。
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