本研究は消費者のエシカル志向と行動に焦点をあて、その行動メカニズムを解明することを目的としている。具体的には、課題1:消費者のエシカル問題の認知の多様性とその特徴、課題2:消費者のエシカル志向の特徴と構成要素の特定化、課題3:企業のエシカル支援やエシカルプロダクト選択の規定要因の解明の3つの課題について取り組んだ。 3つの研究課題は同時並行的に進めてきた。2018年度に関連する先行研究をレビューし、2019年に消費者調査を実施し設定した仮説の検討を行ってきた。しかし2020年初頭に発生したCovid-19により、消費者の生活環境は急変した。そのため、このパンデミックが少し落ち着くまでさらなる消費者調査は延期していた。2021年度もCovid-19は収束していないものの、感染対策を前提とした新たなライフスタイルや経済活動を再開しようとする動き(withコロナ)が社会全体に見られるようになった。そこで2021年度は延期していた消費者調査を実施し、消費者のエシカル志向とエシカルプロダクト選択の規定要因等の解析に必要なデータを収集すると共に、Covid-19発生前に収集した(2019年度)消費者調査結果と比較して、消費者のエシカル志向やエシカル行動に対するCovid-19の影響も合わせて分析した。その結果、仮説モデルの妥当性を統計的に確認できたと共に、withコロナの体験は消費者のエシカル志向を高め、社会課題解決のために消費者自らも積極的に取り組むべきという当事者意識を高めることが明らかになった。一方で、エシカル行動は重要だと認識しているものの、どれがエコプロダクトかわからない等の知識が及ばず、行動促進には友人や知人がコミュニティ規範の影響が大きいことが確認された。なお、これらの成果は学会発表の他、日経新聞経済教室への寄稿、日経SDGsフォーラムでの基調講演等の形でも社会還元した。
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