当該年度は,前々年度研究にて明らかになった「1.SNSでの売場情報の共有と伝染購買の関係」と前年度研究にて明らかになった「2.投稿行動の背景要因となる売場陳列に対するバラエティ知覚と視認行動の関係」の2点について,小売CRM,小売店内のモバイルマーケティング,消費者間相互作用という3つの研究の融合という観点からまとめた。 具体的な知見として,1.については,「コスパの良い」という小売店舗の価格イメージ情報が消費者の口コミや購買に与える影響に関し,「コスパの良い」に関する投稿情報に接触した消費者は,「安い」に関する投稿情報に接触した消費者に比べて①返信回数が多い,②「品質」を通じての「価格」という話題に多く接触している,③「品質」を通じての「楽しい」という話題に多く接触している,④対象店舗での購買量や購買単価が増加した,の4点が明らかになった。次に2.については,①売場陳列商品数(SKU数)と投稿の数の間には逆U字型の関係があること,②陳列商品を知覚する際の情報処理の流暢さと知覚多様性の両方において最適なSKU数があること,③最適な陳列SKU数を持つディスプレイに対して,消費者はディスプレイへの接近時に陳列商品を効率的に視認し,それが投稿行動を媒介する効果があること,の3点が明らかになった。 これらの知見は,小売業がソーシャルメディア上で話題として盛り上がる要件や,投稿行動につながるような売場ディスプレイの要件の提示したという実務的示唆も含んでいる。
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