研究課題/領域番号 |
18K01874
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
若林 靖永 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (70240447)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エフェクチュエーション / 起業 / マーケティング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、市場創造の新しいパターンとしての「エフェクチュエーション」(サラスバシー)のモデルにもとづいて、伝統産業、観光、小売商業などの地域発の起業、事業創造のプロセスを解明することである。理論的には、マーケティングのイノベーションとして起業を理論化し、実務的には、それにもとづく地域創生等の展開をめざしている。 2019年度の研究では、第1に、前年度に引き続き、起業家へのインタビュー調査を通じて、特に流通におけるイノベーションのパターン類型を明らかにし、流通学会全国大会で発表した。流通イノベーションのパターンには、マッチングにおけるイノベーション、価格情報の提供というイノベーション、新取引形態の創造というイノベーションに分類できるという見解をまとめ発表した。流通イノベーションの包括的な枠組みとしてはまだ不十分であるが、イノベーションの方向性を示したと言える。 第2に、小売サービスを中心に、従業員満足度とその規定要因についての統計的実証研究をすすめた。従業員満足度の多次元性に注目して、内部サービス品質の各次元が従業員満足度の各次元に影響を与えるか、従業員満足度の各次元が外部サービス品質の5次元(物理的状況,信頼性,人的相互作用,問題解決,ポリシー)に影響を与えるか、内部サービス品質の各次元が外部サービス品質の各次元に影響を与えるか、についての検討をすすめている。その成果の一部は流通学会全国大会で発表した。 第3に、京都ものづくりバレー構想の研究と推進寄附講座の活動を通じて、起業家との共同研究、起業家をとりまくエコシステムについての検討もすすめた。定期的に起業家等を招いた研究会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、起業アプローチによる調査研究については引き続き着実にすすめることができたと評価できる。しかしながら、エフェクチュエーションの理論の再検討および調査方法の見直しという点では、着手しているものの、まだまだ成果をとりまとめるには至っていない。以上のことから、おおむね順調ではあるが、課題も残されていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、引き続き起業家インタビュー、あるいはプロデューサー人材へのインタビュー調査を計画して実行する。同時に、調査手法の開発に努め、エフェクチェーションの理論的深化をすすめられる研究方法の具体化をすすめていくこととする。そのために、起業家研究者との共同研究等を推進する。なお、海外調査も当初計画に含んでいるが、新型コロナウイルスの感染の世界的な拡大のなかでこの点は計画を見直し、国内での調査研究、文献研究に取り組む。
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