研究課題/領域番号 |
18K01874
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
若林 靖永 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (70240447)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 起業家 / 伝統産業 / 小売サービス / エフェクチュエーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、市場創造の新しいパターンとしての「エフェクチュエーション」(サラスバシー)のモデルにもとづいて、伝統産業、観光、小売商業などの地域発の起業、事業創造のプロセスを解明することである。理論的には、マーケティングのイノベーションとして起業を理論化し、実務的には、それにもとづく地域創生等の展開をめざしている。 2020年度の研究では、コロナ禍によって海外への渡航が難しくなったため、国内での調査インタビューに集中して取り組んだ。第1に、前々年度、前年度に引き続き、起業家へのインタビュー調査を3件実施した。いかにして新市場創造のためのアイデアを得たのか、それをどのように最初にかたちにしていったのか、というところに焦点を当てて探求し、それぞれ異なる特徴があるところを明らかにできた。これまでの起業家インタビューをふまえた新市場創造のための方法についての論文をとりまとめて、投稿予定である。 第2に、小売サービスを中心に、従業員満足度とその規定要因についての統計的実証研究をすすめ、研究会で発表した。内部サービス品質、従業員満足、従業員定着、外部サービス品質それぞれの多次元性を明らかにするとともに、全体の連関を示す構造方程式モデリングを行った。本研究結果については論文に向けて執筆中である。 第3に、京都ものづくりバレー構想の研究と推進寄附講座の活動を通じて、「コーゼーション」ではなく「エフェクチュエーション」をすすめる起業家の行動やマインドセットについての検討をすすめ、それを広げるためのエコシステムづくりに取り組んだ。 第4に、コロナ禍のもとでの商品開発についての調査、および、京都市の伝統産業従事者がどのような対応をすすめているか、緊急調査(京都市)を実施し、その集計分析に取り組んだ。コロナ禍での商品開発事例については学会発表を行った
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍によって海外への渡航が難しくなったため、海外調査研究は実施できていないが、起業アプローチによる調査研究については引き続き着実にすすめることができたと評価できる。しかしながら、エフェクチュエーションの理論の再検討および調査方法の見直しという点では、着手しているものの、まだまだ成果をとりまとめるには至っていない。また、新たにコロナ禍での伝統産業事業者の取組についての調査研究を開始することができた。以上のことから、おおむね順調ではあるが、課題も残されていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、引き続き起業家インタビュー、あるいはプロデューサー人材へのインタビュー調査を計画して実行する。同時に、調査手法の開発に努め、エフェクチェーションの理論的深化をすすめられる研究方法の具体化をすすめていくこととする。さらに、伝統産業事業者や地域商業についての調査研究をすすめて、コロナ禍での創造的な対応についても注目する。なお、海外調査も当初計画に含んでいるが、新型コロナウイルスの感染の世界的な拡大のなかでこの点は計画を見直し、引き続き国内での調査研究、文献研究に取り組む。
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