本研究の目的は,組織において不祥事が発生した場合に組織がいかに対応すべきかを,ヒトの主観的な判断の視点から切り分け,それぞれのパターンにおける組織の対応が構成員の組織に対するロイヤリティに与える影響と,組織活動の影響を受ける対象(主に消費者)からの組織に対する評価に与える影響の検討を行うことである.2022年度は,企業不祥事のパターンの違いにおける企業に対する評価の変化およびその影響因の同定を目的として,複数の不祥事事例を呈示し,それぞれの不祥事における企業に対する評価を測定した.評価項目は“道徳的に許せない”,“法的に罰したい”,“社会に迷惑をかける”,“商品・サービスを利用したい”,“怒りを感じる”の5項目であった.この調査の結果を元に,被害・影響の大小の操作が有意または有意傾向を示したシナリオ3種,かつ被害・影響の大小の操作を加えた計6種のシナリオを作成し,さらにそれぞれのシナリオにおける”組織の対応”を操作した実験シナリオ群を作成した.これらのシナリオを用いて,参加者に対して1件の不祥事事例・当該の不祥事に対する企業の対応を呈示し,企業に対する評価を測定した.評価項目は“道徳的に許せない”,“法的に罰したい”,“働いてみたい”,“商品・サービスを利用したい”,“怒りを感じる”,“抗議をしたい”の6項目であった.さらに,評価内容における性格特性の要因の同定のため,性格特性big5との外的妥当性の確認されている10項目の質問(TIPI-J)の測定を行った. また,前年度実施した,意識的・非意識的なステレオタイプ的反応が違反行為や事例の記憶内容に対して与える影響の検討を行った結果を論文投稿した.
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