研究課題/領域番号 |
18K01882
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研究機関 | 公立鳥取環境大学 |
研究代表者 |
磯野 誠 公立鳥取環境大学, 経営学部, 教授 (50550050)
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研究分担者 |
高橋 佳代 鹿児島大学, 法文教育学域臨床心理学系, 准教授 (90616468)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ビジョニング / バックキャスティング / 創造性 / 想像 / アイデア / 新製品開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的とは、ビジョニングによるアイデア開発において、ビジョンの内容・型の異なりがアイデア革新性実現に与える影響を、実験調査によって明らかにすることである。研究初年度である2018年度では、1.先行研究レビュー、2.実験仮説・方法設定、プリテスト1実施、3.結果分析、実験仮説・方法修正の3点を行なった。 まず1について、当初は創造的認知研究分野の知見に依拠すべくレビューするつもりであったが、レビューの範囲を広げ、臨床心理学における時間的展望研究分野の知見に依拠することを試み、その分野もレビューした。そして結果的に2.実験仮説として、時間的展望概念に依拠したものを設定した。従って仮説を構成する概念(特に時間的展望)の操作定義も、時間的展望研究に依拠して設定した。その仮説とは次の通り:ビジョンの時間的広がり・現実性それぞれが、内発的動機づけを高める;内発的動機づけがより高ければ、創出されるアイデアの創造性はより高い。その上で学生群1(n=90)と学生群2(n=140)それぞれを対象として実験を実施した。3.その結果、いずれの学生群においても、仮説は支持されない結果となった。 その結果を分析すれば、特に内発的動機づけ概念を十分に捉えきれていないことが想定された。すなわち大学の授業の一環で行なったために、被験者である学生はほぼ一様に内発的動機は高かったと答えており、それとビジョンの時間的広がり・現実性や、アイデア創造性との関係は現れなかったことが考えられる。その一方で、ビジョンの現実性とアイデア創造性との関係は見られたために、それを手掛かりとして、内発的動機づけを取り上げることは諦め、改めて仮説は創造的認知研究分野の知見に依拠したものとし、設定しなおすこととする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、仮説を時間的展望概念に依拠して導出したために、その仮説には内発的動機づけ概念が含まれた。その仮説をもとにして実験を実施したが、仮説は支持されない結果となった。その考えられる理由として、大学の授業の一環としてのアイデア開発実験という状況においては、その内発的動機づけは捉えきれないことが考えられる。その対策として、仮説はそのままで実験状況を修正することも考えられるが、適切な実験状況を見出すにはより時間がかかることが想定される。 従って研究2年目となる2019年には、仮説を、当初の予定であった創造的認知研究に依拠して改めて設定し直すことで対応する。 当初の研究計画では、研究1年目はこのような事態を想定し、プリテストとその結果をもとにした仮説の再設定としていたことから、進捗状況は結果として計画通りである。 一方、本研究と並行して行ってきた「中小企業による新製品開発の成功要因:開発成果に結びつくFEフェーズ管理」研究に対して、本研究で行なった先行研究レビューの知見を生かして、その調査課題を導出しまた調査結果を考察した。その研究知見を、2019年5月に開催された公立鳥取環境大学地域イノベーション研究センター研究報告会にて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目となる2019年度には、上述のように、改めて創造的認知研究分野の研究知見をレビューし、仮説を設定し直す。その再設定される仮説には必然的に内発的動機づけ概念は含まれない。その上で実験計画を立て、実施し、結果を分析する。プリテストの結果から、(内発的動機づけを除いた)ビジョンの現実性とアイデア創造性との関係性は見出されていることから、創造的認知研究に依拠した仮説は支持されることが想定される。
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次年度使用額が生じた理由 |
磯野割り当てについて、未使用分が1384円となり、高橋割り当てについて、未使用分が34104円となった。磯野の未使用分は、ほぼ誤差範囲内ではあるが、物品として統計解析用のPC購入を来年度に回すことにしたことによる影響である。高橋の未使用分は、研究ミーティングを一部メールなどで済まし旅費を当初予定より使わなかった影響である。
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