研究課題/領域番号 |
18K01883
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
岡野 雅雄 文教大学, 情報学部, 教授 (40224042)
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研究分担者 |
浅川 雅美 文教大学, 健康栄養学部, 教授 (80279736)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 広告表現 / 注目度 / 視聴印象 / CM好感度 / アイトラッキング |
研究実績の概要 |
CM効果を高めるためには、CMの広告表現が個々の受け手の諸特性に合っているか否かによって、広告に注目してもらえるか否かが異なることを考慮する必要がでてきている。これを解明するにあたって、アイ・トラッキングのような生理的な手法を用いることで無意識的なプロセスも解明しようとする研究が盛んになってきている。 そこで、浅川・岡野(2016)では、複数のCM広告表現の要素のなかで、いずれの被調査者からも注目されない要素と、ある特定の選択基準を重視する者からは相対的に高く注目される要素があることを見出した。ただし、この研究では、広告表現のうち「伝達内容」への注目について検討しており、もう一側面である「表現形式」への注目度を検討していなかった。 そのため、本研究では、「伝達内容」に関する文字情報に加え「表現形式」もAOI(興味領域)に指定して、「いずれの被調査者からも注目されない要素と、ある特定の選択基準を重視する者からは相対的に高く注目される要素」について検討した。具体的には、注意の指標としてアイ・トラッキングのデータ、情動反応の指標としてGSR(皮膚電気反応)の二つの指標を用いた視聴実験を行い、また、その後に被調査者の言語報告も求めることで、総合的にCM視聴時の消費者反応を分析し、以下の結果が得られた。 ①購買態度において合理的特性が高い人は低い人に比べて、第3者機関の推奨に関連する要素(受賞マークなど)に注目している。他方、タレントのような表現形式への注目度は比較的低い。 ②特定保健用食品のCMのうち、効用イメージを感じさせるCMでは、全般的に、情動反応が生じにくい。ただし、視聴者の特性別に見てみると、合理的特性が高い者は、伝達内容が前面に出ているときに情動反応が生じ、合理的特性が低い者は、タレントのような表現形式が前面に出ているときに情動反応が生じる傾向が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年11月4日~12月19日の間に実験を行った。具体的には、62名の大学生に、1名ずつ装置の前に座ってもらい、「ウェイト・コントロール」をナレーションのみならず文字情報でもはっきりと訴求している7本のCMを、画面に1本ずつ提示して、その視線データを記録した。同時にアイ・トラッキング装置とリンクさせ、GSR(皮膚電気反応)の測定も行った。さらに、実験終了後に、消費者の購買特性、「食品選択基準」(「カロリーが低いこと」「脂肪を減らすこと」「ダイエットに役立つこと」などを重視しているか否か)、「視聴印象」、CM好感度、についての質問紙に回答してもった。これらのデータを解析して、以下の知見を得た。 ①購買態度において合理的特性が高い人は低い人に比べて、第3者機関の推奨に関連する要素(受賞マークなど)に注目している。他方、タレントのような表現形式への注目度は比較的低い。 ②特定保健用食品のCMのうち、効用イメージを感じさせるCMでは全般的に、情動反応が生じにくいことが示された。ただし、視聴者の特性別に見てみると、合理的特性が高い者は、伝達内容が前面に出ているときに情動反応が生じ、合理的特性が低い者は、タレントのような表現形式が前面に出ているときに情動反応が生じる傾向が示唆された。 なお、上述の結果は、日本社会心理学会第60回大会および日本感性工学会第21回大会で発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2018年に行った、アイトラッキングおよび GSR(皮膚電気反応)を用いた実験において、二つの指標を利用して実験を行うことの有効性が示された。そのうえ、言語データの併用も有効であることが示された。だが、アイトラッキングでは問題なくデータを取れても GSR は正確なデータを取れなかったケースがいくつか存在した。2019年度は、 2018年度に得られたデータを解析して、学会発表を行うことによって、そこから得られたフィードバックをもとに、実験手法や解析手法の改善を考えた。 そこで今年度は更なる実験を行うことも考えている。具体的には、当初のデータ数の目標は被調査者100名分であったが、現在62名分のデータ数があり残りのデータ収集を目指す予定である。もしCOVID-19の影響により年度内に対面実験が不可能となった場合は、非接触型のデータ収集方法により、すでに取得済みのデータを補完することによって、この研究の目的を達成したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に第二回アイトラッキング実験をする予定であったが、2018年度に予定より多くのデータが取れていたため、データ解析と学会発表でのフィードバックによる第二回アイトラッキング実験計画の微調整を進めることにした。そのため、2019年度の執行額が少なくなったが、この分は、2020年度の実験で使用する予定である。 このように、実験の時期はずれたものの、最終的には計画時の予算計画に合った執行ができると考えている。
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