研究課題/領域番号 |
18K01886
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
東 伸一 青山学院大学, 経営学部, 教授 (70368554)
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研究分担者 |
横山 斉理 法政大学, 経営学部, 教授 (70461126)
矢澤 憲一 青山学院大学, 経営学部, 教授 (70406817)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 流通 / 小売 / 商業 / 質的比較分析 (QCA) / 過程追跡法 (Process Tracing) / 方法論 / 混合研究法 (Mixed Methods) |
研究実績の概要 |
2021年度は前年度までの取り組みを踏まえ、衣料品小売業における企業成長を支える市場の内部構成について質的比較分析(QCA)を通じて明らかにすることを試みた。また、飲食料品小売業についても同様の実証研究をおこなうための環境を整えるとともに小商圏におけるfill-in shoppingに関する定量的研究を進めた。今年度も新型コロナウイルスのパンデミックの影響をうけ、現地での報告を予定していた学会はすべてオンラインまたは対面とオンラインのハイブリッド型による実施となった。日本から欧米への渡航は極めて困難であったため、ACRA:American Collegiate Retailing Association 年次大会、IMPグループ年次大会、CERR : Colloquium on European Research in Retailing ともオンラインでの報告をおこなった。ACRAでは流通研究における混合研究法の有効性についての2021年春の報告を踏まえ、22年春には消費者の業態認識が顧客満足に与えるモデレーション効果についての定量的研究報告をおこなった。IMP学会では過程追跡法を用いて、衣料品小売チェーンに関する単独事例による因果推論に関する報告をおこなった。CERRでは、QCAを用いた実証研究としてLevy et al.(2005)が提唱した小売形態展開論に関する仮説であるBig Middle仮説の命題をLarge-NによるQCAで実証するとともにLevy et al.が置いた前提の精緻化をおこなった。CERRでの報告はベストペーパー賞の次点となり、この報告をもとに執筆した論文 "Revisiting the Big Middle: An fsQCA Approach to Unpack a Large Value Market from a Product Specialist Retailer’s Perspective"は、International Journal of Retail & Distribution誌に掲載が決定した。国内では日本商業学会全国大会にて流通研究における過程追跡法の適用可能性についての報告をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の面ではおおむね研究計画の段階で設定した目標を達成することができている。その一方で、新型コロナウイルスの国内外での感染状況が好転していないことから、フィールドベースでの調査や特定の商業集積来街者に特定したサーベイの実施が困難な状況が続いているため、それらの形態をとる調査を延期せざるを得なかった。本研究課題の終盤ではこれらの形態による調査を計画しているため、研究期間延長の申請をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題ではこれまでの活動を通して、過程追跡法(Process Tracing Method)や質的比較分析(Qualitative Comparative Analysis : QCA)の方法論としての認識論的背景や多変量解析と比較した場合のそれぞれの長所・短所についての整理とともに、これらの流通研究における可能性の検討をおこなってきた。また、それらを踏まえた実証研究にも取り組み、国内外の学会での研究報告や関連領域の学術誌への投稿をおこなってきた。2022年度は研究期間延長後の最終年度となるため、以下の点にとくに注力し、本研究課題による成果の取りまとめを中心課題としている。具体的には (1) 小商圏における小売競争に関する知見の獲得、 (2) 飲食料品と衣料品分野における小売競争の比較、 (3) 過程追跡法の流通研究における実践的活用を想定した方法論の研究、 (4) QCAの流通研究における実践的活用を想定した方法論の研究 を実施する計画としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
以下、おもに2つの原因により、次年度使用額が発生している。(1)本研究課題の申請時の計画では、国際学会での研究報告のための旅費を計上していたが、2020年春以降、参加したすべての国際学会がオンライン(またはハイブリッド)開催となったため、旅費の支出が発生していない。(2)新型コロナウイルスの感染状況が長期にわたって好転しないことから、フィールドベースの調査の実施が延期となっている。 海外渡航のための旅費が発生しない分、オンラインでの学会報告の機会および、学術誌への投稿数を増やしているため、校閲費用やオープンアクセスの登録料などでの研究費の有効活用を図っている。また、フィールドベースの調査についても22年度には実施する計画を立てている。
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